研究実績の概要 |
パイロトーシスは、ネクローシス様の形態変化を伴うプログラム細胞死の一種であり、炎症誘導や感染防御に関わる。その誘導には細胞質蛋白であるガスダーミン(GSDM) ファミリー分子の成熟化が必須であり、ヒトでは5種類(GSDMA - GSDME)、マウスでは9種類のGSDMが存在している。完全長GSDMは未熟型であり活性を示さないが、特定のプロテアーゼによって切断されることで成熟化する。現在までにGSDMを成熟化させる宿主プロテアーゼが数種類同定されている。一方、細菌/真菌由来プロテアーゼがGSDMを切断してパイロトーシスを正または負に制御する可能性も考えられる。しかし、これまでにそのような報告例は少ない。本研究では、GSDM分子を成熟化・不活化する細菌/真菌由来プロテアーゼを探索する。さらに、そのようなパイロトーシスの制御が感染病態に与える影響を明らかにする。 今年度、細菌/真菌由来プロテアーゼがGSDM分子を切断する可能性を検討する目的で、ヒトの全5種類のGSDM(GSDMA - GSDME)のリコンビナント蛋白を作製した。さらに、これらの蛋白標品を細菌/真菌の培養上清と反応させて切断をウエスタンブロットで検出したところ、緑膿菌の培養上清中にGSDMDを切断する活性が認められた。そこで、緑膿菌が産生する主要なプロテアーゼとしてLasA, LasB, AprA, protease IV, AP28, AP56, PASP, MucDの8種類の遺伝子をクローニングした。これらの緑膿菌プロテアーゼをヒトGSDMD発現HEK293細胞およびコントロールHEK293細胞に強制発現させたところ、AprAとMucDがGSDMD発現細胞にのみ膜傷害害を引き起こした。この結果から、AprAとMucDがGSDMDを活性化する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、細菌/真菌由来プロテアーゼがGSDM分子を切断する可能性を検討する目的で、ヒトの全5種類のGSDM(GSDMA - GSDME)のリコンビナント蛋白を作製した。さらに、これらの蛋白標品を細菌/真菌の培養上清と反応させて切断をウエスタンブロットで検出したところ、緑膿菌の培養上清中にGSDMDを切断する活性が認められた。そこで、緑膿菌が産生する主要なプロテアーゼとしてLasA, LasB, AprA, protease IV, AP28, AP56, PASP, MucDの8種類の遺伝子をクローニングした。これらの緑膿菌プロテアーゼをヒトGSDMD発現HEK293細胞およびコントロールHEK293細胞に強制発現させたところ、AprAとMucDがGSDMD発現細胞にのみ膜傷害害を引き起こした。この結果から、AprAとMucDがGSDMDを活性化する可能性が示唆された。 これまでの研究において、計画通りに目的の細菌由来プロテアーゼを同定できた可能がある。そのため、本課題は順調に進展していると考えることができる。
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