研究課題
我が国では、原因不明、治療方針が未確定で後遺症を残すおそれが少なくない300以上の疾患を指定難病と認定している。その中には、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス(SLE)、サルコイドーシスなど、自己免疫機序が原因となっている可能性が高く、ステロイドが治療薬として用いられている疾患が多く含まれている。ステロイドは多くの難治性疾患において唯一無二といえる治療薬として用いられているが、長期内服が必要な患者は、その多岐にわたる重篤な副作用に苦しめられている。近年関節リウマチなど一部の疾患については、生物学的製剤の導入により病態コントロールが改善されたが、未だにステロイド以外に有効な治療法がない疾患は多い。我々は、メタロペプチダーゼ、ナルディライジン(NRDC)の欠損マウス欠損(NRDC-KO)が複数の炎症モデルにおいて疾患抵抗性を示したこと、炎症細胞特異的なNRDC欠損が自己免疫性疾患治療につながる表現型を呈したことから、NRDCを標的とする治療が、ステロイドの代替となる可能性を追求する。本研究では、1)T細胞、B細胞に発現するNRDCの自己免疫疾患における意義を明らかにすること、2)ペプチダーゼ活性欠損型変異体NRDCノックインマウスを用いて、NRDCの酵素活性が抗体産生や自己免疫疾患で果たす役割を検討すること、3)NRDC酵素活性阻害薬の自己免疫疾患モデルにおける有用性を検証することを目的とする。当該年度においては、1)T、B細胞特異的NRDC欠損マウスを用いて、自己免疫性肝炎およびSLEモデルにおける免疫細胞NRDCの意義検討、2)全身で酵素活性を欠損させると周産期に死亡するマウスが多かったため、組織特異的に酵素活性を消失させることが可能なマウス系統の確立を行い、順調に結果が得られている。
2: おおむね順調に進展している
本課題では以下の3つの目的を定めた。1)T細胞、B細胞に発現するNRDCの自己免疫疾患における意義を明らかにすること、2)ペプチダーゼ活性欠損型変異体NRDCノックインマウスを用いて、NRDCの酵素活性が抗体産生や自己免疫疾患で果たす役割を検討すること、3)NRDC酵素活性阻害薬の自己免疫疾患モデルにおける有用性を検証すること。このうち1)については、各細胞の特異的NRDC欠損マウスを用い、複数の自己免疫疾患モデルにて結果が得られており、極めて順調に進んでいる。2)においては、遺伝背景がBL6のペプチダーゼ活性欠損型変異体NRDCノックインマウスがほぼ100%周産期で死亡したことから、他系統への戻し交配が必要になった。一方組織特異的酵素活性欠損マウス(NRDCflox/flox:Rosa26-Lox-Stop-Lox-NRDC-E>A)の作製は順調に進んでおり、今後T細胞、B細胞で特異的に酵素活性を欠損するマウスによる解析を予定している。3)においても、陽性化合物の構造展開は進んでおり、全体としておおむね順調に進展している。
今後も引き続き、上記の3つの目的に沿って研究を推進する。1)においては、自己免疫性肝炎およびSLEモデルに加え、関節リウマチモデルも用いて、免疫細胞に発現するNRDCの自己免疫疾患における意義を明らかにする。2)においては、NRDCflox/flox:Rosa26-Lox-Stop-Lox-NRDC-E>Aと、T細胞、B細胞特異的Cre強発現マウスを交配し、それぞれの細胞特異的に酵素活性を欠損したマウスを作製し、T細胞、B細胞におけるNRDCの酵素活性が果たす役割を明らかにする。3)では、陽性化合物の構造展開を進め、さらに効率よくNRDC活性を阻害する化合物を特定し、その疾患モデルマウスにおける薬効を評価する。
疾患モデルにおける実験を予定していた遺伝子改変マウスが、周産期死亡することが判明し、実験計画の変更(次年度への延期)を余儀なくされたため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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Archives of Dermatological Research
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http://www.shiga-med.ac.jp/pharm/index.html