今後の研究の推進方策 |
アロ個体由来のGS細胞が精子形成を起こすのには特に大きな問題がなかった。しかしながら、生まれてきた個体がどの程度正常な機能を有するのかについてはまだ検討できていない。外見上は健康に見えるものの、長期にわたる健康への影響や妊孕性がどの程度正常であるかを調べる必要がある。これらのF1産子の解析に加えて、子孫において異常があるかどうかについても検討する必要がある。本年度はこの実験のために、以下の実験を予定している。以下の機能を測定する。 1)血中の生化学マーカーとホルモン解析 クローン動物ではLDHと血中アンモニア濃度が亢進する。さらに肥満と高インスリン血症を呈する。そこでいくつかの生化学マーカー(ALB,TP, BUN, LDHなど)を継時的に解析する。またテストステロンとエストロゲンは配偶子形成や個体の健康状態に影響するため、性ホルモンとFSH/LH の濃度を測定する。 2) 体重 クローン動物では肥満が見られるため、体重の変動を記録する。 3)免疫機能評価 クローン動物では加齢と共に抗体産生能低下、マクロファージの細胞貪食能の低下などの免疫反応の異常が報告されているため、以下の項目について調べる。(i)Senescence-associated (SA) T細胞(老化関連T細胞)の解析; 脾臓や腸管リンパ節を回収し、PD-1+CD44highCD4+ T cells, CD153+ SA-T cells, 濾胞性ヘルパーT 細胞(Tfh細胞), 制御性T細胞の頻度をフローサイトメトリーにより測定する。 (ii) 抗体産生能の評価; SA-T細胞とTfh細胞は老化個体においてB細胞を刺激し胚中心を誘導し免疫グロブリンのクラススイッチを引き起こすことから、胚中心B細胞の異常やクラススイッチを起こした細胞の頻度を測定する。(iii) 自然免疫の解析; 個体老化と共に自然免疫能が低下するため、脾臓やリンパ節内の樹状細胞やマクロファージが産生する炎症性サイトカインを測定する。
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