研究課題
現在、ヒトの世界に存在するコロナウイルスは、わずか6種類のみである。βコロナウイルス属のHCoV-OC43とHCoV-HKU1、αコロナウイルス属のHCoV-229EとHCoV-NL63の4種類は、ヒトに軽度の風邪症候群を引き起こす。一方、新型コロナウイルス感染症の原因であるSARS-CoV-2と中東呼吸器症候群の原因であるMERS-CoVの2種類は、βコロナウイルス属に属し、ヒトに重篤な呼吸器疾患を引き起こす。βコロナウイルスの増殖性や病原性などを解析するためには、同一の細胞培養系を用いる必要がある。これまで様々な培養細胞が試されてきたが、βコロナウイルスすべてが増殖可能な細胞培養系は存在しない。特に、HCoV-NL63およびHCoV-HKU1については、増殖可能な細胞培養系自体が存在しないという大きな問題があり、コロナウイルス研究の進展を妨げている。そこで本研究では、これまでに確立したヒト鼻腔オルガノイド実験系を改変し、βコロナウイルスの新たな培養法を開発することを目的とした。本年度は昨年度に引き続き、これまでに開発した3次元のヒト鼻腔オルガノイドの培養方法を改変し、2次元の鼻腔オルガノイドシートの作製方法を開発した。2次元平面培養したヒト鼻腔オルガノイドを用いて、HCoV-229E、HCoV-OC43だけでなく、HCoV-NL63およびHCoV-HKU1が増殖することを確認した。新型コロナウイルスについても、複数の変異株が効率よく増殖することを確認した。さらに近年ヒトで流行するH3N2インフルエンザウイルスはMDCK細胞で増殖しないことが知られているが、2次元鼻腔オルガノイドではウイルスが増殖することを確認した。また、2次元鼻腔オルガノイドの作製方法を改良し、iPS細胞から2次元鼻腔様のオルガノイドを作製することができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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