研究課題/領域番号 |
22K19434
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩永 史朗 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (20314510)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | マラリア / 動物モデル |
研究実績の概要 |
熱帯熱マラリア原虫はヒトに感染するマラリア原虫の内、最も病原性が高く、発熱・脾腫に加え、特有の脳機能障害による重篤な昏睡(脳マラリア)を引き起こし、その感染による被害は年間数十万人規模の死者に上る。原虫ゲノム上には多数の赤血球表面抗原分子が存在し、原虫はこれらの分子を使い宿主免疫回避・抑制、並びに病原性を示す。更に一部の表面抗原分子は血管内皮上のレセプターと結合し、末梢血管を塞栓させ、脳機能障害を引き起こす。以上の知見を総合すると、「感染赤血球表面抗原分子はワクチン開発、脳マラリア治療の重要な標的分子である」と示唆される。しかし、熱帯熱マラリア原虫がヒトや一部の霊長類にしか感染しないため、前臨床試験に不可欠なマウス実験が実施できず、その研究開発は進んでいない。更にマラリアの動物モデルであるネズミマラリア原虫は熱帯熱マラリア原虫の表面抗原分子の相同分子を有さないため、研究に利用できない。よって、赤血球表面抗原を研究可能なマウス実験モデルの開発が求められている。本年度はネズミマラリア原虫の赤血球表面抗原分子の候補を同定し、これにGFPを結合して実際の局在を調べた。その結果、EMAP-1が感染赤血球表面に局在することを明らかとした。現在、EMAP1にRIFINを結合した組換え原虫を作製し、その局在解析を行なっている。これに加え、宿主側レセプターの組換えタンパクを作製し、新たな表面抗原との相互作用解析を並行して実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネズミマラリア原虫の感染赤血球表面分子の同定に成功し、これにヒトマラリア原虫の表面抗原分子を融合した組換え原虫の作製に成功した。よって、目的とする動物モデルにおいて原虫側の技術的な問題を克服したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
宿主側分子の解析を進め、動物モデルの作製を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより海外からの輸入試薬の納入が遅れ、組換え原虫作製計画の一部に遅れが生じた。次年度には試薬は納入される見込みは立っており、速やかに実施する。
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