研究課題
T細胞がどのような抗原に対して、どのように反応するかは胸腺における「正」と「負」の選択によって決まる。この胸腺機能に関する近年の重要な発見は、それぞれの選択過程に鍵となる分子が同定されたことである。これらは、「正の選択」に働くb5tと「負の選択」に働くAireである。1型糖尿病モデルであるNOD背景のb5t欠損マウスと、同じくNOD背景のAire欠損マウスとの二重欠損マウスを作製して両者の欠損によってどのような病態が生ずるかを調べるべく個体の作出を進めた。まだ観察数は十分とは言えないが、現在のところb5t欠損NODマウスは糖尿病の発症率についても、膵臓以外の臓器の自己免疫病態についても未処置NODマウスとの差異を認めていない。一方、樹状細胞(DC)の細胞質に転移した胸腺髄質上皮細胞(mTEC)由来のAire蛋白の機能については、Aireレポーターマウスを用いて胸腺内のDCにmTEC由来のAire蛋白が存在することを確認した。そこで、mTECから受け取り、胸腺内DCの細胞質に存在するAire蛋白が、トレランスに関わる重要な機能を発揮するという仮説を検証すべく、胸腺移植の実験を行った。すなわちmTECにAireのnuclear dotを発現するAireレポーターマウス胎仔胸腺を胸腺欠損ヌードに移植したところ、ヌードマウス由来の胸腺内DCにもAire dot proteinの発現を確認した。しかもこの場合にもAire dot proteinは細胞質内に存在したことから、mTECからDCへのAire nuclear dot proteinの移行は、DCによるmTECの貪食を介して起きている可能性が高いと思われた。本研究課題における最大の謎である、この細胞質に転移したAireが果たして抗原提示に関与しているか否かについては、T細胞の免疫応答を解析する実験を行う必要がある。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
J. Immunol.
巻: - ページ: 1-14
10.4049/jimmunol.2200780
Frontiers in Immunology
巻: - ページ: 1-11
10.3389/fimmu.2023.1176450
Cancer Med.
巻: - ページ: 1-6
10.1002/cam4.5777
Immunohorizons
巻: 7 ページ: 140-158
10.4049/immunohorizons.2200103
https://www.tokushima-autoimmunity.com