研究課題
三日熱マラリア原虫はヒトの幼若赤血球に侵入し増殖するが、大量のヒト幼若赤血球をルーチンに入手することは困難であるため実用的な培養系が存在しない。そこで、熱帯熱マラリア原虫のヒト成熟赤血球を認識するリガンドを三日熱マラリア原虫に導入することで、ヒト成熟赤血球に侵入し、発育することができる三日熱マラリア原虫の作出を目指す。この原虫を用いることで、本原虫の実用的な培養系が確立できると考える。次年度はP. cynomolgiを用いて作製するリガンド発現プラスミドの評価とP. cynomolgiにおける表現型を検討することを計画した。初年度にP. cynomolgiへのEBA175発現プラスミドの導入を開始したが、3か月たっても薬剤耐性原虫が出現しなかった。そのため、エピソームによる遺伝子導入に加えて、CRISPR/Cas9遺伝子編集なども用いた複数のプロトコールにより遺伝子導入実験を繰り返した。しかし、薬剤耐性株を得ることが出来なかった。P. knowlesiへの遺伝子導入は問題なく行われているため、P. cynomolgi、もしくは、我々の保有するP. cynomolgi株に固有の問題と思われる。また、我々の保有するP. cynomolgiは我々がin vitroで維持しているP. knowlesiや熱帯熱マラリア原虫よりも増殖速度が遅く、そのため、遺伝子導入の成功の有無の評価をするのに時間を要し、本年度中に組換えP. cynomolgi原虫を得ることができなかった。一方、初年度に確立したP. cynomolgiに最適化した培養培地を用い、複数のP. knowlesi感染ヒト患者の血液から、P. knowlesi in vitro培養株の樹立を試みたところ、ヒト株で樹立に成功した。
4: 遅れている
次年度に計画するP. vivaxへの遺伝子導入を行うためには、P. cynomolgiへの遺伝子導入を再現性良く安定して実施できるようになる必要があるが、その最適化に時間を要している。
P. cynomolgiへの再現性の高い遺伝子導入プロトコールの確立を優先して検討する。ルシフェラーゼ発現プラスミドを用いて、赤血球へのプレロード法、ロンザ社4D-Nucleofectorシステムおよびロンザ社Nucleofector 2b デバイスを用いて成熟分裂体期原虫に遺伝子導入する方法等について、条件を振って導入効率を検討することで、P. cynomolgiでの遺伝子導入法の最適化を進める。
令和5年度に行う予定であった組換えP. cynomolgi原虫の作製と表現型解析が遅れており、令和6年度にすることにしたため、その分の分子細胞生物学試薬類、タンパク質解析用試薬一式、培養用試薬一式、プラスチック器具などの予算の一部を令和6年度に使用することとする。
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
The Journal of Infectious Diseases
巻: 227 ページ: 1121-1126
10.1093/infdis/jiac469
https://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/protozoology/Achieve02.htm