研究課題
IL-17産生性ヘルパーT細胞 (Th17)は、生体内で長期間生存し、これが免疫難病の治療抵抗性および治療後再発の一因と考えられている。T細胞の副刺激阻害薬(CD28阻害薬)であるアバタセプトが、Th17依存性自己免疫性皮膚炎の発症を完全に抑制するにもかかわらず、治療後のマウスには、抑制されたTh17が「しつこく生存」している事に着目し、この解析を行っている。T細胞レセプター単独、あるいはT細胞レセプター+ CD28で共刺激したTh17における遺伝子発現を比較した。2時間という短時間にも関わらず、CD28共刺激を行った細胞には、IL-21, GM-CSF, TNFをはじめとする16種の炎症性サイトカインが誘導され、CD28刺激が、Th17による炎症に大きく貢献する事が考えられた。次に、Th17依存性皮膚炎モデルにおいて、無治療(自己免疫性皮膚炎を発症)およびアバタセプト治療マウス(CD28阻害、皮膚炎を未発症)に由来するT細胞をFACS解析した。無治療マウスにおいてはインターフェロンγ陽性のエフェクターT細胞が観察されたが、アバタセプト治療群ではほとんど見られない事がわかった。一方、治療群ではIL-17陽性、インターフェロンγ陰性のメモリー様細胞が残存する事がわかった。次に、無治療群、治療群由来のT細胞をRNA-シークエンス解析に供した。無治療マウス由来細胞は各種のサイトカイン遺伝子を発現する一方、治療マウス由来細胞はサイトカイン遺伝子をほとんど発現しなかった。以上の結果から、アバタセプトはTh17による炎症は阻害するがその生存は阻害しないことがわかった。また、治療群で残存した記憶T細胞に発現する特有の遺伝子を複数同定する事ができた。
2: おおむね順調に進展している
FACSおよびトランスクリプトーム解析より、アバタセプト抵抗性T細胞の特徴を見出すことができ、当初計画の目標通りに進展した。
アバタセプト抵抗性メモリー様Th17の解析より、この細胞が発現する複数のターゲット分子を見出すことができた。これらのうち、阻害剤が入手可能なものに関しては、皮膚炎モデルにおいてこの阻害効果を検討する。アバタセプト単独、またはアバタセプト+阻害剤による治療を施し、アバタセプトで残存するメモリー様Th17が完全に消失するか否かを検討する。
受託研究として行う受託解析が年度内に終了しないため、予定していた支出を次年度に繰り越した。4月中には執行できる予定。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Cell Reports
巻: 42 ページ: -
10.1016/j.celrep.2023.112302.
International Immunology
巻: 34 ページ: 609-619
10.1093/intimm/dxac035.