研究課題/領域番号 |
22K19447
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
村松 正道 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 部長 (20359813)
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研究分担者 |
若江 亨祥 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (70638303)
塩田 智之 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (80616144)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ウイルス / B型肝炎 / マウスモデル / ウイルス複製 / 感染受容体 |
研究実績の概要 |
ヒト特異的ウイルスであるB型肝炎ウイルス(HBV)のマウス感染動物モデルの作成を目指している。B型肝炎では、現在臨床応用されている抗ウイルス剤は逆転写酵素阻害剤の1種類しかなく、逆転写酵素阻害剤はウイルス複製を有効に阻害するが、これだけではウイルスを肝細胞からウイルスを駆逐できない。ウイルス排除に至る治療方法や治療薬の開発が切に求められている。しかし、未だ2剤目が登場しておらず、抗ウイルス剤開発が遅延している要因の1つに適切なマウスモデルがないことがある。HBVがマウスに感染しないことがマウスモデル構築の最初のハードルであるが、2012年にヒト特異的HBV感染受容体が、胆汁酸受容体NTCPであることが報告され、俄に感染特異性要因の探索がホットとなった。本研究計画では、まずヒトNTCPを強制発現したマウスを作成することでHBV感染マウスモデルが構築できないか検討した。残念ながら、ヒトNTCPを強制発現したマウスやマウス肝細胞株は、明らかなHBV感染複製は観察されなかったが、HBVと同じ表面ウイルス蛋白(HBsAg)を持つデルタウイルスは感染の確認ができた。次にヒト由来の候補共益膜蛋白とNTCPの共発現でHBV感染がマウス肝細胞株で確認できるか検討したが、いずれの候補因子もHBV感染は確認できなかった。ヒトNTCPに加えて、1因子を追加するだけでは、マウスの肝細胞株は、HBV感染許容しないことがわかった(少なくとも選んだ候補では)。一方、デルタウイルスは、ヒトNTCPの発現のみでマウスにin vitro 及びin vivo両方で、少なくとも感染(侵入)できることがわかったが、HBsAgの供給がないためこの実験条件ではウイルスの効率良い放出は起こらないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね想定の範囲内での研究の進捗を得た。 特にヒトNTCPの単独発現のみでデルタウイルスの感染(肝細胞の侵入)をマウスで観察できることを確認できたことは大きい。一方、ヒトNTCPの単独発現だけで、マウス肝細胞でもHBVの感染が観察できるとする論文報告は2本あるが、それは追試ができなかった。HBVについては想定の範囲でのネガティブデータであるが、次の一歩を進める上で確認できたことは進捗と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後ヒトNTCPに続くウイルス感染を支持する候補因子の探索を継続する。 また、網羅的手法としてcDNAライブラリーで候補因子の遺伝子導入をすることも検討する。これらのアプローチの弱点は、ウイルス感染複製を支持する因子が3つ以上存在する場合、同定が難しいという点が挙げられる。そこでその対策として、デルタウイルスのマウス感染系をHBV感染マウスモデルのサロゲートモデルとして使用可能か検討していく。この系であれば、少なくともHBV感染のうち、そのエントリー相をマウスで評価できる可能性がある。技術的ハードルとしては、マウスに感染させるには大量のウイルスが必要で、デルタウイルスの感染源をどのように効率よく作るかという課題があるが、これは恒常的産生細胞を構築することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画どおりしようしたが、新型コロナによる影響で学会出席や、テレワーク選択の影響が若干あった。これらは2023年に全額、消耗品として使用する。
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