近年、大きな注目を集めているがん免疫療法の中でも、がんワクチンは免疫系の持つ絶妙なパワーと特異性を利用することで、腫瘍の再発を予防できる可能性がある。具体的には、外科的に切除された腫瘍に基づく全腫瘍細胞ワクチン(WTCV)は、様々な腫瘍関連抗原を宿主免疫に暴露することにより、強固な抗腫瘍免疫応答を引き起こすと考えられてきた。しかし、ほとんどの腫瘍は、宿主免疫との継続的な相互作用によって免疫編集されているため、免疫原性はほとんどない。したがって、患者由来の非改変腫瘍に基づくWTCVを調製しても、腫瘍の発症を予防することはできない。したがって、効果的なWTCVのためには、腫瘍細胞の免疫原性を改善する必要がある。本研究では、腫瘍細胞内のインターフェロン制御因子7(Irf7)軸(Irf7とその下流因子を含む)が免疫原性を制御する上で重要であることを示した。実際、Irf7軸としてを増強したIrf7、Ifi44、Usp18を導入したWTCVは、放射線による腫瘍不活化後にワクチン接種すると、顕著な再発予防効果を発揮した。最も注目すべきは、Irf7、Ifi44、Usp18を導入したマウス大腸がん細胞のワクチン接種により、すべてのマウスでチャレンジド腫瘍の発生が阻止され、観察期間中の生存率が100%になったことである。さらに、ワクチン効果につながるメカニズムは、インターフェロン-γ産生B細胞によって媒介された。本研究は、免疫原性細胞死を検出するためのゴールドスタンダードであるin vivoワクチン接種実験を通じて、Irf7とその下流因子をがん細胞に導入することにより、免疫原性の低いがん細胞の特性を変換する、すなわち免疫原性を高めるための新規戦略を初めて実証した。この研究は、腫瘍の免疫原性を増強し、再発予防としてWTCVを使用する方法について新たな洞察を与えるものである。
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