研究課題/領域番号 |
22K19450
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 雅之 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50166823)
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研究分担者 |
鈴木 未来子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80508309)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 前がん細胞 / NRF2 / 食道がん |
研究実績の概要 |
がん細胞の多くは、長い年月をかけてDNA変異を蓄積することで形成される。この過程では、様々なクローン(前がん細胞)が生み出される。従来、前がん細胞は、がん細胞形成の単なる途中経過としか捉えられておらず、それ以外の役割は考慮されてこなかった。そこで本研究では、がんモデルマウスを用いて、前がん細胞が周囲の細胞(正常細胞およびがん細胞)に与える影響を検証することを目的とした。今年度はおもに食道扁平上皮がんモデルマウスを用いた解析を行った。食道がんや肺がんなどの20-30%において、転写因子NRF2の恒常的な活性化がみられる。NRF2活性化を伴う食道がんの形成機構を明らかにする目的で、食道上皮全体の細胞および上皮の一部の細胞で、NRF2タンパク質を分解するKEAP1を欠失させることで、NRF2を活性化したマウスを作製した。食道上皮全体の細胞でNRF2を活性化させると、食道上皮全体で増殖が活性化し、細胞層の肥厚と過角化(ケラチン層肥厚)が起こった。しかしながら、食道上皮の一部の細胞でNRF2を活性化させると、NRF2活性化細胞は一時的に増殖するものの周りの野生型細胞との競合によって上皮から排除された。さらにこの競合によって、NRF2活性化細胞の周辺にある正常細胞では、DNA障害マーカーの発現が増加した。競合が起こる時期に発がん剤を投与すると、NRF2活性化細胞ではなく、正常細胞ががん化した。以上から、NRF2活性化を誘導する変異のみが存在する状況では、NRF2細胞自身は排除されるためにがん化せず、周囲の細胞のがん化を促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、おもに食道扁平上皮がんモデルマウスを用いた解析を行った。この解析から、食道上皮全体でのNRF2活性化は食道上皮細胞層の肥厚と過角化をもたらすが、一部の細胞でNRF2を活性化させると、NRF2活性化細胞は一時的に増殖するものの周りの野生型細胞との競合によって上皮から排除されることが明らかとなった。これらの結果をもとに、2本の原著論文と1本の総説論文を発表した。そのため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
3番染色体転座・逆位を伴う白血病では、白血病細胞は患者によって様々な分化形態を示す一方、巨核球の増加を伴うという共通点がある。巨核球には造血幹細胞を支持するニッシェとしての機能があることが知られていることから、これらの巨核球が白血病細胞を支持しているのではないかという仮説を立てている。来年度は、3番染色体逆位を再現する遺伝子改変マウス(3q21q26-EVI1マウス)の巨核球がもつ白血病細胞支持能について解析を行い、仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は食道がんモデルマウスの解析を行なったが、動物施設改修のために白血病モデルマウスの解析は行わなかった。次年度使用額は白血病モデルマウスの解析のために使用する。
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