研究課題
細胞間相互作用はがん転移に重要な役割を果たすが、一過性の細胞相互作用を高感度に検出するには技術開発が必要である。そこで本研究では、これまで細胞レベルでの分子間・細胞間ラベリング法として報告のあるEMARS(enzyme-mediated activation of radical source) 法、EXCELL(enzyme-mediated proximity cell labeling) 法をベースにin vivoでもラベル可能な高感度人工酵素を作製し、マウス肺転移モデルでのがん細胞-血管内皮細胞の相互作用を検出を目指す。まず、分子進化によるケミカルラベリング用人工酵素の改良を行うため、EMARS法およびEXCEL法をベースにHRP、SrtAにmutagenic PCRでランダム変異を加えたカセットを作製し、カセットのシーケンスにより変異の導入を確認した。この変異カセットを膜タンパク発現ベクターpDisplay骨格を用いて細胞膜上に発現するようにし、さらに遺伝子導入細胞の可視化並びに遺伝子導入効率の補正のためにT2A-tdTomato配列をpDisplay由来細胞質側配列の後に付加した。このキメラ遺伝子をレンチウイルスベクターに導入することで、細胞膜上に異なる変異が導入された人工酵素を発現するライブラリーベクターが完成した。人工酵素によるラベリング反応とtdTomatoによる遺伝子発現レベルの補正を用いたフローサイトメトリーによる高ラベリング能を持つ変異人工酵素発現細胞の濃縮を目指して、変異酵素ライブラリーを浮遊系293細胞にMOI = 0.3 で導入し、薬剤選択を行いライブラリー細胞を樹立した。
2: おおむね順調に進展している
分子進化による人工酵素の改良のためのmutagenic PCR、変異酵素発現ライブラリーの作製が順調に進み、フローサイトメトリーによる高ラベル化酵素発現細胞の選別に着手出来ており、今までのところ研究はおおむね順調に進んでいる。
フローサイトメトリーによる高ラベル化変異酵素発現細胞の濃縮を繰り返したのち、人工酵素のシーケンス解析を行い、改良人工酵素の配列情報を取得する。平行して細胞膜上への発現で効率のよいリンカー配列の検討を行う。これらの結果をもとに、細胞膜上に高ラベル化効率人工酵素を発現させたがん細胞を作製し、in vitroでの他の細胞との共培養でのラベル化の確認を行い、その後、尾静脈移植後の転移肺でのラベル化の確認を行う。ここまで問題なく開発が進めば、実際に転移肺でがん細胞と相互作用する血管内皮細胞と、相互作用していない血管内皮細胞をフローサイトメトリーで回収し、遺伝子発現の違いなどバイオロジーに関する解析を行う予定である。
高ラベル化効率人工酵素の開発で、主にPCRやプラスミドを用いた遺伝子工学技術を用いたが、これらに関して既に購入済みであった試薬・消耗品を用いて大部分の研究を進めることが出来たため、次年度使用額が生じた。次年度使用額と翌年度請求分の助成金を合わせて、今後費用のかかる細胞・マウスを用いた実験を行う。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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