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2022 年度 実施状況報告書

がん組織における分化転換機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K19468
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

八尾 良司  公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 部長 (80291095)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード患者由来オルガノイド / 大腸がん
研究実績の概要

大腸がんの多くを占める腺がんは、APC、TP53、KRAS遺伝子などのドライバー変異により発生し、さらに遺伝子変異が蓄積することにより進展することが知られている。しかし、一般的に進行が早く、予後不良であるケースが多い低分化がんに分類される大腸がんは、腺がんとは異なる分化形質をもつ細胞集団で構成され、その発生過程は明らかにされていない。本研究課題では、低分化腺がんを構成する細胞集団の特性を明らかにし、その発生・維持機構の解析を行うために、低分化大腸がんと診断されたがん組織の手術検体からオルガノイドを作成し、解析を行った。
20名の粘液がん、印環細胞がん、低分化腺がんを含む大腸がん患者の手術検体からオルガノイドを樹立した。そのうち一名の患者からは、2箇所の同時切除肝転移巣からもオルガノイドを樹立した。全てのオルガノイドのエクソームシークエンスを行い、低分化大腸がんは高分化腺がんとは異なる遺伝子変異プロファイルを示すことが明らかになった。
樹立されたオルガノイドの免疫不全マウスへの移植実験を実施し、樹立されたオルガノイドの造腫瘍能と組織型を評価した。その結果、マウスに生じた腫瘍は、由来するヒト生体がん組織と組織学的な類似性が示された。興味深いことに、ヒト生体組織およびマウス移植組織から取得された腫瘍の組織学的特徴は、オルガノイドのin vitroにおける形態と関連性がある可能性が示唆された。さらに、複数の組織型が混在する病巣から樹立されたオルガノイドは、形態が異なる複数の細胞塊から構成され、マウス移植組織においても複数の組織型が生じた。これらの結果は、混在型腫瘍から樹立されたオルガノイドが、低分化大腸がんの発生と進展を解析する上で特に有用なリソースとなる可能性を示す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

稀な大腸がんである低分化大腸がんからオルガノイドを樹立・凍結保存を行い、on demandで解析に用いるリソースであることを確認した。さらに、低分化大腸がん由来オルガノイドは、生体がん組織の特性を維持し、解析リソースとしての有用性が確認されたことに加えて、腺がんとは異なる遺伝子変異にプロファイルを持つことが明らかになったため。

今後の研究の推進方策

遺伝子変異プロファイルに関する詳細な解析を進める。また、免疫不全マウスへの移植実験を継続し、長期観察による転移能について検討するとともに、採取された移植組織の解析を進める。混在型オルガノイドについては、形態に基づいてin vitroでクローン化し、移植することにより、組織型との関連を検討するとともに、各クローンのエクソームシークエンスを実施し、形質の異なる低分化大腸がんの遺伝子変異プロファイルを明らかにする。
RNA-seqを実施し、低分化大腸がん組織型がもつ特徴を明らかにするとともに、遺伝子発現プロファイルによる分類を行い、組織型との関連を検討する。

次年度使用額が生じた理由

一部のオルガノイドの増殖が遅く、予定された実験が年度内に終了せず、次年度に持ち越したため。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Transcriptomic intratumor heterogeneity of breast cancer patient-derived organoids may reflect the unique biological features of the tumor of origin2023

    • 著者名/発表者名
      Saeki Sumito、Kumegawa Kohei、Takahashi Yoko、Yang Liying、Osako Tomo、Yasen Mahmut、Otsuji Kazutaka、Miyata Kenichi、Yamakawa Kaoru、Suzuka Jun、Sakimoto Yuri、Ozaki Yukinori、Takano Toshimi、Sano Takeshi、Noda Tetsuo、Ohno Shinji、Yao Ryoji、Ueno Takayuki、Maruyama Reo
    • 雑誌名

      Breast Cancer Research

      巻: 25 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s13058-023-01617-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Integration of human inspection and artificial intelligence‐based morphological typing of patient‐derived organoids reveals interpatient heterogeneity of colorectal cancer2022

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Takuya、Natsume Yasuko、Doi Motomichi、Nosato Hirokazu、Iwaki Toshiyuki、Yamanaka Hitomi、Yamamoto Mayuko、Kawachi Hiroshi、Noda Tetsuo、Nagayama Satoshi、Sakanashi Hidenori、Yao Ryoji
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 113 ページ: 2693-2703

    • DOI

      10.1111/cas.15396

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 患者由来オルガノイドを用いた細胞個性解析2022

    • 著者名/発表者名
      八尾 良司
    • 雑誌名

      Medical Science Digest

      巻: 48 ページ: 585-588

  • [雑誌論文] BRAF V600E変異陽性大腸癌オルガノイドを用いたEGFR、BRAF及びMAPK阻害の耐性に関わるバイオマーカーの解明2022

    • 著者名/発表者名
      大隅 寛木、篠崎 英司、大木 暁、八尾 良司
    • 雑誌名

      大和証券ヘルス財団研究業績集

      巻: 45 ページ: 58-63

  • [学会発表] 患者由来オルガノイドから見えてきたがん組織の細胞社会ダイバーシティ2022

    • 著者名/発表者名
      八尾 良司
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 患者由来大腸癌オルガノイドのAIによる形態タイピングの試み2022

    • 著者名/発表者名
      長山 聡、岡本 拓也、八尾 良司
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 同一患者に由来するヒト大腸がんオルガノイドを用いたがんの発生・転移機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      八尾 良司
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 患者由来オルガノイドを使った大腸癌組織細胞多様性の解析2022

    • 著者名/発表者名
      八尾 良司
    • 学会等名
      第4回 学際的がん研究 夏の学校@別府
  • [学会発表] 消化管組織の細胞社会ダイバーシティ2022

    • 著者名/発表者名
      八尾 良司
    • 学会等名
      細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 研究成果報告 公開シンポジウム 細胞社会ダイバーシティーの理解と制御 -これまでとこれから-

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公開日: 2023-12-25  

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