膵がんの5年生存率は未だ10%未満であり、新たな治療診断技術の開発が世界中で切望されている。細胞の最表層に存在する糖鎖はがん化に伴い劇的に変化することから、新たな創薬標的として期待されている。申請者らは最近、個々の細胞に発現する糖鎖とRNAを同時解析する世界初の技術(scGR-seq)を開発した。本研究では、scGR-seqを用いて患者由来膵がん腫瘍組織を解析することで、腫瘍組織を構成する個々の細胞に発現する糖鎖とRNAの情報を取得するとともに、がん幹細胞の新たな糖鎖マーカーを同定することを目的とした。本研究で新たに同定したがん幹細胞糖鎖マーカーは、膵がんの新たな創薬標的として医療応用を目指す。本年度はドロップレット技術をscGR-seqに導入することで、1万個の単一細胞を一斉解析する技術、ドロップレット型scGR-seq、を開発し、論文発表した。本技術を用いて膵癌細胞株と正常膵管細胞の解析を行い、フローサイトメトリーで得られたデータと比較検証した。その結果、scGR-seqで得られたデータは、フローサイトメトリーで得られた結果と高い相関を示すことがわかった。さらにドロップレット型scGR-seqを用いて膵癌オルガノイド及び膵癌患者組織の解析を行い、ClassicalからBasalに移行する過程の糖鎖構造変化を解析するとともに膵癌サブタイプごとの糖鎖マーカーを同定した。
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