研究課題
本研究では、加齢に伴い末梢血T細胞において蓄積される遺伝子変異を同定し、これらの変異遺伝子を野生型T細胞に付加することにより、その長期生存能を高め、同細胞から作製される抗腫瘍T細胞が持続的な治療効果を誘導できるという仮説を立て、以下の研究計画を立てた。①末梢血T細胞における加齢に伴う遺伝子変異を検出する。②加齢に伴う遺伝子変異(群)が正常T細胞機能の長期生存能に寄与することを示す。③個々の変異遺伝子がCAR-T細胞機能に及ぼす性質変化を分子レベルで解明する。加齢に伴う遺伝子変異として、TET2、DNMT3Aに加え、DUSP11を抽出した。まずTET2、DNMT3A、DUSP11遺伝子をCRISPR Cas9法によりノックアウトし、T細胞及びCAR-T細胞の機能に及ぼす影響を解析した。TET2やDNMT3A遺伝子をノックアウトさせたT細胞もしくはCAR-T細胞は、既報通り、未分化性(長期生存能)が顕著に促進していた。一方、DUSP11遺伝子をノックアウトさせたT細胞及びCAR-T細胞は、TET2やDNMT3AノックアウトT細胞とは異なり、未分化性(長期生存能)の促進が認められなかった。さらに細胞増殖やサイトカインや細胞障害性因子の産生能、さらに細胞障害能(抗腫瘍効果)についても影響が認められなかった。以上の通り、研究期間中においてCAR-T細胞免疫治療法に有利に働く加齢性変異の同定に至ることが出来なった。今後、新たな加齢性遺伝子変異候補について、同様にT細胞及びCAR-T細胞の機能に及ぼす影響について解析を行う予定である。
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