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作業記憶は前頭連合野を主座とし、記憶を貯蔵する下位システムと情報の統合・操作を行う中央実行系に分けられる。短期記憶の神経表象は遅延期間中の持続的な活動として古くから報告があるが、記憶を更新・消去する際に前頭連合野ニューロンがどのような活動を示すのか明らかではない。本研究では、サルに眼球運動を用いたn-back課題を訓練してこれを調べた。すべての実験は機関の動物実験委員会の審査と承認を受けて行った。
3頭のサルの前頭前野外側部から課題中に神経活動の記録を行った。これまでに、特定の視覚刺激の位置を記憶している間に持続的な活動を示すニューロン、特定の刺激位置の記憶を消去する際に一過性に活動するニューロン、単純な視覚応答の大きさが受容野内の視覚刺激の順番や課題ルールによって変化するニューロンなどを発見することができた。また、記録部位の電気刺激によって、反対視野の刺激位置を覚えておくことができなくなるような行動を誘発することに成功している。令和5年度はこれらの成果を学会で発表するとともに、詳しいデータ解析を行って論文を作成し、現在国際誌に投稿している。また、課題中の前頭前野から多点電極を用いて局所場電位（LFP）の記録を行い、解析を行った。課題特異的に一定のタイミングでLFPの低周波数成分のパワーや試行間でのコヒーレンスが変化するといった興味深い結果が得られているものの効果量が小さく、現在、さらに詳細な解析を進めている。
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