研究課題/領域番号 |
22K19491
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊田 太郎 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (60593530)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 老化 / in vitroモデル / エピゲノム / iPS細胞 / 膵島 |
研究実績の概要 |
世界的な医療水準の向上に伴い高齢化社会が進みつつある中、健康寿命の延伸が重要な課題となっている。しかしながら、研究の加速に不可欠な、若年および老年ヒト細胞・組織の入手や介入の困難さが研究の進展を妨げている。このため、新たなヒト老化in vitroモデルが必要である。また、現状では老化した細胞そのものの機能回復に向けたアプローチは手段が限られている。近年の研究から、経年的に起こったゲノムの後天的な修飾(エピゲノム状態)は、細胞老化の根幹に位置する原因の一つであることが分かってきた。そこで、本研究では、エピゲノムの編集技術に着目して、iPS細胞由来の分化細胞を用いた抗老化研究の新たなプラットフォームを構築する。また、構築した系を用いて、ヒト細胞の回復の可能性を検証する。 まず、任意のタイミングでエピゲノム編集可能なヒトiPS細胞株の樹立を試みたが、導入した遺伝子配列は未分化iPS細胞で機能しても、分化誘導した細胞、特に標的細胞種では機能できないことが判明した。そこで、遺伝子発現調節の様式を変更することにした。分化細胞種として我々が注目している膵島細胞はほとんど増殖能がないため、アデノ随伴ウィルス(AAV)による遺伝子発現系を検討することにした。AAVは膜表面のタンパク質発現の違いにより(セロタイプ)、細胞種によって導入効率が異なる。このため、まず膵島細胞での遺伝子発現に効率的なセロタイプを選択し、さらにその中から持続期間の良いセロタイプを選択し、遺伝子導入のベクターとした。現在、このベクターにエピゲノム編集分子の組み込みを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、モデル作製のためにTet-onシステムを導入した細胞株を利用しようとしていたが、我々の標的分化細胞では導入遺伝子がほとんど機能していないことが判明し、導入様式を変更した。さらに、分化細胞の産生量の低下があり、検討数が限られてしまい、モデルの樹立に至っていない。このため遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
標的細胞種である膵島で遺伝子導入効率の良かったAAVのセロタイプを基本として、エピゲノム編集の導入系を構築する。続いて、作製した分化細胞に対してエピゲノム状態を改変し、老化モデルとなりうるか検討する。具体的には、エピゲノム状態(DNAのメチル化状態)、細胞機能、SASP、一般的な細胞老化の指標を評価する。また、これらの老化モデルの指標が回復可能であるか検討する。膵島における評価の後、他の細胞種でも同様の検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の罹患した病気の治療により研究実施期間が想定よりも少なくなった。また、検討に用いる分化細胞の産生量が低下し、検討数が限られてしまった。これらのため、経費の執行が低下した。
細胞の産生量の低下は、原因を解明し回復したため、次年度は検討数の増加が見込まれる。また、次年度は人員の増加により研究が加速される予定である。これらに伴う消耗品使用量の増加に残余分を使用する。
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