研究課題
自閉スペクトラム症は、社会的コミュニケーションや対人的相互反応の困難さ、特定の運動や会話の反復、固執やこだわりなどを主徴としており、こうした特性 は発達早期から存在する。そのため自閉スペクトラム症は通常神経発達の障害とされる。一方で発達退行といわれるように一度獲得した言語機能などが失われる 例が約3割で報告されている。さらに、かつて小児期崩壊性障害と呼ばれた経過不良の一群についても現在の診断基準(DSM-5)では自閉スペクトラム症に内包さ れている。このような見地から自閉スペクトラム症の一部の病態には神経変性疾患に類似した病態が内包されている可能性が高いと考えた。最近、自閉スペクト ラム症に関連する異常伸長核酸リピートが新たに見出された。同定された自閉症リピートは、次世代シークエンサーの性能およびin silicoでのゲノム解析技術 の限界から解析が進んでこなかった「ゲノム脆弱部位」と呼ばれる不安定で多型が多い領域に高頻度に見出されている。本年度は認知症患者を中心として大阪大学精神医学教室に蓄積されている患者由来DNA検体からリピートの検出を行ったところ、臨床的に自閉スペクトラム症圏と診断されていた症例から神経変性疾患関連の既知の非翻訳領域リピート伸長が検出された。現在患者由来組織も活用しながら当該リピート伸長におけるリピート翻訳の機序や病態との関連について解析を進めている。また他の自閉スペクトラム症関連リピートについても解析をはじめており、リピート翻訳産物の同定およびリピート翻訳産物が本来の遺伝子産物の発現に与える影響についても検証を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに進展しているため。
上記のリピート伸長におけるリピート翻訳の病的意義をまとめて論文発表する。並行して現在解析中のもう一つの自閉スペクトラム症関連リピートおいても自閉スペクトラム症病態における意義についての解析を進めていく。
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