研究課題/領域番号 |
22K19496
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
新村 健 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70206332)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | フレイル / エクソソーム / microRNA / コホート研究 / 老化 / サルコペニア / 認知機能障害 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
2022年度は、我々が主催する高齢者コホート研究、FESTA(Frail Elderly in Sasayama-Tamba Area)研究を春と秋とに分けて計7回行った。対象者としては、2015-2018年の間に本調査に参加者した方を中心にダイレクトメールで参加を募り、さらに新規参加者もリクルートした。最終的に339名(中央値75歳[72、80歳]、男性122名、女性217名)が本研究に参加した。252名が2回目以上の参加で、87名が初回参加者だった。調査項目は、自己記述と面接によるアンケート調査(BADL、IADL、MMSE、病歴[お薬手帳の確認]、家族歴[家族類型、独居の有無]、教育歴、職業歴、現病歴、既往歴、介護状況、嗜好品、うつスケール、WHOQOL26、食品摂取の多様性スコア、MNA、日本版PSQI)、医学生物学的調査(医師による問診、理学所見、血圧・身体計測、超音波による骨量および筋肉量測定、口腔機能、握力測定、歩行速度計測、Time up to goテスト、5回立ち座りテスト、タンデムテスト、膝進展筋力測定などの身体機能、バイオインピーダンス法による体組成分析、血液検査)、actigraphによる活動量計測からなった。J-CHSによるフレイル診断におけるロバスト、プレフレイル、フレイルはそれぞれ156名(46.0%)、165名(48.7%)、18名(5.3%)であった。AWGS2019によるサルコペニア、非サルコペニアは、それぞれ36名(10.8%)、296名(89.2%)であった。まだ前回受診時のフレイル状態、サルコペニア状態との比較が終わっていないが、フレイル、サルコペニア症例の数が少ないため、今年度はエクソソームmicroRNA解析は見送り、2023年度のコホート調査が終了した時点でフレイル状態の変化に基づく複数の群で、一括して解析を行う方針としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したように、2022年度も順調にコホート研究の実施が行われた。合計339名もの高齢の参加者に本研究にご協力いただき、多くの情報が得られたことは満足のいく結果と捉えている。一方、高齢者がさらに年齢を重ねていくことで、身体的理由や交通手段の制限(免許返納など)により、本調査に参加しずらい状況に陥っていることに対して、有効な打開策を考案できていない点が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の課題は、いかに2回目、3回目の調査参加者を増やし、特にフレイル状態の参加者の数を増やせるかであると考えている。本研究は、フレイル状態の変化に着目し、(1)ロバスト(健常)→ロバスト群、(2)ロバスト→フレイル群、(3)フレイル→フレイル群、(4)フレイル→ロバスト群の4群間で血清中のエクソソームmicroRNAを解析し、比較検討する計画である。2022年度の印象では(1)(2)(4)群は解析と統計に足りうるサンプル数を確保できるめどが立ったが、(3)はかなり厳しい状況にある。よって(3)に対しては個別の訪問調査実施も念頭に、2023年度のコホート研究実施計画を作成している。また2023年度後半にエクソソームmicroRNA解析を一括で行うにあたり、最適なエクソソームの抽出方法(沈降法、抗体法、PSアフィニティ法での比較)や、microRNA解析を委託する業者の選定を慎重に行っていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年のコホート研究の実行にあたって、本研究の目的であるエクソソームmicroRNA解析研究とは異なる、睡眠の質とフレイル状態に着目した別の目的で獲得した研究費が使用可能であったため、コホート研究の遂行に必要な人員に対する謝金、検査委託料等の必要経費、消耗品の購入を、そちらから支出した。さらに研究実績の概要に記載した通り、2022年度はエクソソームmicroRNA解析自体は見送り、血液サンプルの収集に特化した調査研究を実施した。このような理由により、当初の計画より2022年度の支出は大幅に減少したが、2023年度は、2年間のコホート調査研究から得られたサンプルを用いたエクソソームmicroRNA解析を実行する計画であり、当初の予算以上の支出になると考えている。そのため2022年度の予算を2023年度に繰り越して2023年度に一括で使用させていただきたい。
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