研究課題
先行研究でAPP過剰発現ADモデルマウスで立証した血液脳関門通過型細胞内抗体の先制医療効果を、APP過剰発現自体に由来する課題を克服し、かつヒト病態を忠実に反映するAPPノックインマウスでも再現することができたことを受け、本研究に着手した。初年度はアルツハイマー病におけるその臨床応用を見据え、血液脳関門や細胞膜通過機構、更にシナプス毒性抑制効果発現機構等の抗体作用機序解明を行った。まず細胞膜通過機構の検証を行った。SH-SY5Y神経芽細胞におけるAlexa-488標識抗体のuptakeが37℃から4℃の培地温度変化で阻害され無いことを確認し、抗体の細胞膜透過がEnergy-independent pathway (direct translocation)で有ることが判明した。血液脳関門移行の検証はジルコニウム-89標識抗体プローブでのPET画像検証を行い、APPノックインマウスでAPP非ノックインマウスの両者でフルボディー抗体を謳歌するBBB移行性を確認し、PET診断実用化へのハードルは依然として高いものの、治療を一体化しての医療応用の可能性実現に向け前進した。先制医療効果確認済みのAPPノックインマウスと同年齢の健常マウスにおける脳病理検査からは、抗体治療群での海馬錐体細胞変性抑制効果やオートファジー誘導での腫大変性神経突起抑制効果など、水迷路試験で観察された海馬依存性記憶障害抑制効果を裏付ける傍証が得られてきている。
2: おおむね順調に進展している
APP過剰発現マウスとAPPノックインマウスではAD発症病態が異なることが明らかとなり、ヒト病態を忠実に反映する後者での本研究が今後の臨床応用に向けて非常に重要であることが明らかとなった。抗体作用機序解明を引き続き継続する。
今後は病理学的検証に生化学的検証を加えながら、マイクロ抗体作用機序解明を行う。
本年度はPET画像でのBBB通過検証を優先し、BBB通過能定量のための放射性同位体標識実験を次年度へと繰り越したが、次年度はこの繰り越し分を利用してマイクロ抗体の放射性同位体標識を外注依頼後実験を施行しさらなる傍証取得を目指す。
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J Nanobiotechnology
巻: 21 ページ: 36-50
10.1186/s12951-023-01772-y