本研究では、霊長類iPS細胞由来心筋細胞を心筋梗塞発症後3か月経過した慢性心筋梗塞モデルに自家移植し、他家移植に対する優位性を検証するとともに、免疫抑制剤を使用せずに細胞が長期生着するか確認した。 1)カニクイザルiPS細胞由来心筋細胞の作製とレシピエントカニクイザルの同定:エピゾーマルベクターを用いてOct3/4、Sox2、Klf4、L-Mycを遺伝子導入することによりiPS細胞を5系統作製した。さらに未分化iPS細胞に対して、アクチビンA、BMP4を加えることにより、レシピエト1頭当たり2×10^8個の心筋細胞を作製し、凍結保存した。レシピエント動物として、自家移植用の5個体とは別に10個体を用意した。 2)霊長類前臨床移植試験:全身麻酔下で開胸し、左冠動脈前下行枝中部で血流を遮断し、3時間後に再灌流することにより心筋梗塞モデル(ischemia/reperfusion injury)を作製した。心筋梗塞作製12週間後の慢性期に、自家移植(N=5)または他家移植(N=5)、vehicle移植(N=5)を行った。移植4週間後に心臓を摘出し、移植心筋の生着と拒絶反応の評価、腫瘍形成の有無について組織学的に評価した。自家移植動物では、グラフト心筋細胞の生着が確認できた。他家移植動物では、移植4週間後の時点で、グラフト心筋細胞に対する著明な免疫応答が確認された。
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