研究課題
肺は運動刺激や間葉細胞や血球との細胞間相互作用に晒されており、肺胞の機能的成熟には欠かせない環境と考えられているが、障害された肺に細胞を移植した際、これらの肺胞環境を再構築できるかは十分に分かっていない。R4年度は初代細胞と多能性幹細胞から分化誘導された呼吸器細胞を比較し、幼弱な遺伝子発現パターンを呈すると考えられている多能性幹細胞由来のII型肺胞上皮細胞が生体の肺環境下に安定的に生着し、肺胞上皮細胞として機能するかどうかを検討するため、初代細胞を用いてオルガノイドによる長期培養法を検討した。初代肺胞上皮細胞は複数回継代できることを確認したものの、凍結保存が困難であり、徐々に増殖しなくなったためさらなる培養や保存条件の改良を要することが分かった。また、並行して多能性幹細胞から分化誘導した呼吸器細胞を用いて細胞移植の条件検討を進め、ナフタレンと放射線照射による肺障害モデルのほかに毒素付きの抗体を用いたII型肺胞上皮細胞の細胞障害モデル等の開発を進めた。細胞移植用に用いる細胞調整の方法も検討し、加工された培養プレートを用いることで、細胞集塊のサイズをコントロールして肺胞上皮細胞により分化促進した状態のオルガノイドを用意できることも分かった。また、マトリゲル以外の基質を用いた細胞移植法を検討して改良を加えた。一方、高感度レポーターiPS細胞の開発も行い、マウスを飼育したまま、移植後に肺に生着した細胞を可視化できるようになった。また、同時に細胞移植できる個体数を増やすため、培養条件の検討により高感度レポーター細胞株由来の肺前駆細胞について培養条件の最適化を行い、一定のレベルでの量産化も可能となった。これにより、経気管的な細胞移植による生着条件の検討が格段と行いやすくなり、生体内での可視化が困難な初代細胞よりも利便性を高めることができた。
2: おおむね順調に進展している
宿主側の肺の障害条件とドナー由来の細胞移植の双方での条件検討が進んでおり、おおむね順調と判断した。
高感度レポーター機能を持つ肺前駆細胞を十分な細胞数で確保できるようになり、一度に数匹以上のマウスに細胞を移植できるようになったので、引き続き、生着条件を改良しながら、初代細胞の移植条件についても併せて検討していく。マウス呼吸器上皮細胞の障害方法についてもさらに詳しく条件検討することによって移植細胞の生着効率を高めて、肺の再構築に寄与できるかの検討を進める。
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Cell Reports Methods
巻: 2 ページ: 100314~100314
10.1016/j.crmeth.2022.100314