研究課題
本研究は、Hepatitis B virus(HBV)による慢性肝炎・肝線維化・肝発癌、そしてHBV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の免疫疲弊が生じる新たな動物モデルを用いて、免疫疲弊誘導を介したHBV生存戦略の分子機序を解明し、HBVの体内からの完全排除を目指した新たな治療法を開発することを目的とした。ニチシノン補給に肝細胞の生存を依存するフマリルアセト酢酸ヒドラーぜ(FAH)欠損マウス(BL6由来)の肝臓に、FAHのcDNAとHBVをタンデムに組み込んだSleeping Beauty(SB)トランスポゾンベクターを尾静脈急速静注法(HVTi法)で導入し、ニチシノンを中止することで、免疫能を保持しながらHBVが肝細胞から排除されない新たなB型慢性肝炎モデルマウスを作出した。このマウスでは、HBVの肝内持続感染・ウイルス血症とそれに伴う慢性肝炎が10ヶ月以上持続し、CTLが経時変化と共に疲弊し、それに比例してウイルス血症の増悪が認められ、B型慢性肝炎患者における免疫動態が模倣されていた。同マウスの肝臓から単核球を単離しシングルセルRNA-seq解析を実施した。その結果、HBVマウスでコントロールマウスと比べて、CTLクラスターの中で、PD-1高発現の疲弊CTLの頻度が有意に増加していた。また、HBVマウスではNK細胞の活性化並びにマクロファージの機能異常が認められた。以上より、これらの免疫異常がHBV持続感染並びに慢性肝障害に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定されていたマウスモデルを用いた肝内免疫動態解析が終了しており、順調に進んでいる。
B型肝炎マウスモデルを用いて、免疫細胞の除去並びにIFNなどの既存の治療を実施し、ウイルス量の変化や免疫動態の変化を解析することで、免疫疲弊誘導を介したHBV生存戦略の分子機序を解明する。
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Hepatology Communications
巻: 6 ページ: 2474~2487
10.1002/hep4.2014