研究課題
挑戦的研究(萌芽)
消化管ではバルブの役割を担う括約筋は適切なタイミングで弛緩する必要があるが、その分子機構には不明の点が多かった。研究代表者らは、体内から食物を取り込む役割を果たす食道と胃の間にある下部食道括約筋と体外に便を排泄する役割を果たす肛門括約筋に着目した。ヒトの下部食道括約筋では知覚に関わる機械受容チャネルと筋繊維を構成するミオシンタンパク質の重要性を明らかにするとともに、食道の動きを模倣する数理モデルを開発した。一方、マウスの肛門括約筋については脳における排便中枢が排便に関わる分子機構を解明した。
内科学、内分泌代謝・糖尿病学、消化器病学
消化管括約筋の機能障害は、消化管内容物の生理的輸送を妨げることにより、様々な疾患の発症と関連する。例えば、下部食道括約筋の機能障害は、胃内容物を食道に逆流することにより胃食道逆流症やBarrett腺癌を発症する可能性がある。一方、肛門括約筋の機能障害は、便排出障害型の慢性便秘症を発症させる。本研究成果は、消化管括約筋の機能障害により発症する良性疾患から悪性疾患の発症予測や新しい治療法の開発まで幅広い波及効果が期待される。