研究課題/領域番号 |
22K19531
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 有樹修 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (60741519)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 横紋筋リボソーム / 拡張型心筋症 / Ribo-seq |
研究実績の概要 |
われわれは、横紋筋にはRPL3を含む「構成型リボソーム」とRPL3Lを含む「横紋筋リボソーム」の両方が存在することを見出した。さらに、RPL3L KOマウス(= 横紋筋リボソームを欠損)は心臓の収縮能の低下を示し、心臓の収縮に関与する遺伝子など一部の遺伝子で翻訳活性が低下することをRibo-seq解析により見出していた。そこで、本課題では「構成型リボソーム」と「横紋筋リボソーム」にどのような質的な違いがあるかを明らかにしていくことを目標としている。 【1】RPL3L KOマウスの心臓の経時的観察と病理学的解析:これまでに12週齢のRPL3L KOマウスにおいて、有意に心臓の収縮能の低下が観察されているため、老化によりさらに症状が悪化するかを検討するために、10ヶ月齢のマウスなども用いて解析を行ったが、さらなる症状の悪化は観察されなかった。また心臓の圧負荷などを行っても、さらなる悪化は見られなかった。 【2】タグノックインマウスを作製して標的mRNAに違いがないかを検討する:RPL3もしくはRPL3LにHAタグ配列をノックインしたマウスを作製した。さらに、ノックインマウスの心臓のサンプルを用いてHAタグ抗体の免疫沈降で精製し、IP-Ribo-seqなどを行なった。RPL3L-HAのIP-Ribo-seqでは心臓の収縮にかかわる遺伝子などが、RPL3-HAと比較してより濃縮されていた。 【3】クライオ電子顕微鏡解析により構造基盤を明らかにする:横紋筋リボソームの構造をクライオ電子顕微鏡で解析することにより、mRNAや周辺のリボソームサブユニット、アミノアシルtRNA、rRNAとの相互作用領域が、RPL3(構成型リボソーム)とRPL3L(横紋筋リボソーム)でどのように異なるかを解析する。HEK293T細胞にRPL3Lを過剰発現してからRPL3をノックアウトすることにより、横紋筋リボソームのみが存在する細胞の作製を試みたが、その様な細胞を得ることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ノックアウトマウスやタグノックインマウスを作製して、それらの解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
RPL3L-HAのIP-Ribo-seqの結果に関して、より詳細なインフォマティクス解析を進めていく。構造解析に関しては当初予定していたRPL3L過剰発現・RPL3ノックアウトHEK293T細胞を作製することができなかったため、今後はマウス心臓などから横紋筋リボソームを精製してクライオ電子顕微鏡解析を行っていく。
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