われわれは、横紋筋にRPL3を含む「構成型リボソーム」とRPL3Lを含む「横紋筋リボソーム」の両方が存在することを見出した。そこでRPL3L KOマウス(= 横紋筋リボソームを欠損)を作製したところ、心臓の収縮能の低下が認められた。また、RPL3とRPL3 Lは心臓では同程度発現しているが、RPL3L KOマウスではRPL3の発現が2倍程度に増加していたことから、観察された表現型はリボソーム複合 体の数の減少によるものではなく、「構成型リボソーム」と「横紋筋リボソーム」の質的な違いに起因するものであると考えられる。 Ribo-seqを行ったところ、RPL3L KOマウスの心臓では特にAlaやProコドンでの翻訳スピードの遅延が観察されたため、これらコドンでDisomeの形成が亢進している可能性が示唆された。そこでDisome-seqを行ったところ、実際にDisomeの形成亢進が確認された。プロテオーム解析を行うことにより、これらDisomeの形成亢進が確認されたタンパク質の発現量が低下していることを確認した。分子基盤を明らかにするために、クライオ電子顕微鏡による解析を行なっていたが、その解析が困難であったためにAlphaFoldによる予測を行った。RPL3とRPL3Lは共にリボソームにおけるpeptidyl transferase centerの近傍に位置しており、その領域のアミノ酸配列がRPL3とRPL3Lで異なっていたため、このアミノ酸の違いが翻訳スピードに影響していることが示唆された。以上の結果をNature Communications誌に論文として報告した。
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