研究課題/領域番号 |
22K19543
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
粂 昭苑 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (70347011)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 膵臓β細胞 / インスリン分泌 / 機能制御 |
研究実績の概要 |
近年、膵臓β細胞の脱分化による見かけ上の膵臓β細胞の容積減が2型糖尿病の成因であると報告された。本研究では、「組織の上皮細胞は一様に同じ細胞からなるわけではなく、異なる細胞集団の存在により(ヘテロ性)組織恒常性が維持される」という仮説を元に、ヒトiPS細胞の分化誘導系において検証することを目指している。 本年度では、ヒト膵島のRNA sequencingのデータよりインスリン分泌を正に制御する因子、負に制御する因子、増殖に関与する因子について抽出しました。これらの遺伝子について、今後、ヒトiPS細胞由来分化細胞を用いて遺伝子強制発現の実験を進めていくことで検証する。そのため、DOX添加による遺伝子誘導可能な系を構築した。そこで、負の制御因子としてのドパミンシグナル関連のマスター転写因子の一つについて強制発現するプラスミドベクターを構築し、ヒトiPS細胞に導入、Tet-onにより誘導可能な細胞株を取得した。取得したヒトiPS細胞株を用いて、分化途中段階のDox添加による遺伝子発現誘導したところ、目的遺伝子の発現がDox添加により誘導されたことを確認した。今後、今回取得したヒトiPS細胞株を用いて、ヘテロ性に関与する候補遺伝子の強制発現系を用いて、膵島の機能維持における影響の評価へ進めることが可能であると判断した。まずは、ドパミンシグナルのマスター遺伝子の発現によりヘテロ性の検証を行う。さらに、ヘテロ性に関与する他の候補遺伝子についても順次評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト膵島のRNA sequencingのデータより、インスリン分泌を正に制御する因子、負に制御する因子、増殖に関与する因子について抽出しました。抽出した遺伝子について、ヒトiPS細胞由来分化細胞での発現解析から、今後、遺伝子強制発現の実験を進めていくための優先順位付けを行った。また、DOX添加による誘導可能な系を構築するため、ドパミンシグナル関連の遺伝子で、マスター転写因子の一つについて強制発現を試みた。DOX添加による誘導可能なプラスミドベクターに組み込み、ヒトiPS細胞において、Tet-onにより誘導可能な細胞株を取得した。このヒトiPS細胞株を用いて、未分化細胞の状態では、Doxによる遺伝子発現誘導可能であることを確認した。また、このヒトiPS細胞株を用いた膵臓β細胞への分化誘導をさせたところ、分化誘導可能な細胞株があることが確認された。このヒトiPS細胞株を用いて、分化誘導させ、分化途中段階においてDox添加による遺伝子発現誘導したところ、目的の遺伝子の発現がモザイク状に誘導されたことが確認された。今後このヒトiPS細胞株を用いて進めることが可能であると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、ヒト膵島におけるヘテロ性に関与する候補遺伝子のうち、インスリン分泌細胞への分化を正に制御する遺伝子と負に制御する遺伝子の両方について、強制発現系により機能解析を行う。ヒトiPS細胞においてDox添加による遺伝子発現誘導可能な細胞株を取得したことから、次年度はこの細胞株を用いて、ヘテロに遺伝子を発現させた際の膵島機能に与える影響について解析を進める。遺伝子強制発現した場合の、発現する細胞の割合による影響について解析する。また、機能評価方法として、インスリン分泌能の維持について、in vitro および in vivo の両方からのアプローチを行う。ヘテロ性による長期間機能維持に与える影響についての仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた部分は、その他として計上された部分である。これは、施設利用料として予定していたものであったが、無料で使用できる施設を利用したため、その分の支出を節約でき、研究推進にも問題が生じなかった。 次年度の使用計画としては、余裕ができた経費を消耗品の購入に充てることで、一層の研究推進を図る予定である。
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