研究課題
乳がんの10-15%を占めるTriple negative乳がん(TNBC)は、若年者に多く3年以内に再発転移しやすい予後不良のがんである。応募者は、マウスTNBCである4T1細胞は高転移性がん(HM.4T1)と低転移性がん(LM.4T1)の亜集団からなり、②2つの亜集団を混ぜて埋植すると肺転移が増加すること、HM.4T1の肺転移は、LM.4T1由来のエクソソーム投与で更に増加することを見いだした。異なるがん亜集団由来のエクソソームが、がん転移を促進するという世界初の画期的な発見である。このメカニズムを詳細に解析するため、LM.4T1由来のエクソソームを、HM.4T1細胞に添加したとこと、HM.4T1も移動能と浸潤能、幹細胞性は有意に促進した。GEOデータベースの解析から、Wnt7aが増強作用に関与している可能性が示唆された。実際、LM.4T1細胞由来のエクソソームにはWnt7aが多く検出され、Wnt7aを欠損させるとHM.4T1の肺転移が減少することがわかった。Wnt7aはPI3K/Akt/mTORシグナル経路を介してHM.4T1細胞の幹細胞性を増加させた。LM.4T1腫瘍の間質には、αSMA陽性線維芽細胞とCD31陽性内皮細胞(EC)の数が多く、Wnt7aを欠損させると腫瘍間質におけるECの数が減少することがわかった。このように、低転移性サブクローンがエクソソームWnt7aを介して高転移性サブクローンの肺転移を促進することを初めて証明した。Wnt7aはTNBC患者の治療のための分子標的となる可能性が示唆された。また、HM4T1細胞はLM.4T1に比べて鉄代謝能がことなり、鉄キレート剤によりHM.4T1の治療が促進される可能性も明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画の基幹部分が達成でき、論文として発表出来たため。
○マウス実験で得た知見がヒトでどうか、患者検体を用いて検討する。○エクソソーム分泌のメカ二ムズとして、がん増殖・進展に関わる、ERK-MAPKが考えられる。ERK-MAPKの内因性抑制因子であるSpred2によるエクソソームの分泌調整を明らかにする。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Int J Mol Sci
巻: 24 ページ: 4996
10.3390/ijms24054996.
Cancers (Basel)
巻: 15 ページ: 468
10.3390/cancers15020468.
Breast Cancer Res
巻: 24 ページ: 60
10.1186/s13058-022-01557-5.