研究課題/領域番号 |
22K19562
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松川 昭博 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90264283)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | エクソソーム / がん転移 / 腫瘍微小環境 / Triple negative乳がん |
研究実績の概要 |
●MAPK/ERKの内因性抑制物質SPRED2に着目した検討 ・データベースの検討から、SPRED2発現はエクソソーム関連マーカー(CD9/CD81)と負の相関を示すことを見出した。・食道がん細胞株 TE4(SPRED2_High)およびTE8(SPRED2_Low)を用いて、それぞれSPRED2を消去(si-SPRED2/siSP2)および過剰発現(SPRED2-OE/SP2OE)したところ、エクソソーム放出量は増加および減少する結果を得ている・エクソソーム分泌に働くSNAREの発現(VAMP2, SNAP25)はSPRED2で調整される。・SPRED2を消去したTE4(siSP2)、過剰発現したTE8 (SP2OE) 細胞由来エクソソーム(TE4-siSP2、TE8-SP2OE)をそれぞれTE4/TE8細胞に添加すると、コントロール(CTNR)エクソソーム添加に比べて細胞増殖は亢進/抑制する(MTTアッセイ)ことを見出している・SPRED2の発現改変によってエクソソーム内のIL-6産生に差があることを見出している。・IL-6の発現の差異から、STAT3シグナル伝達への違いが生じ、腫瘍微小環境でのマクロファージの機能に変化がでると考え、実験中である。
●Triple negative乳がん細胞株4T1 細胞の研究 ・高転移性がん(HM.4T1)と低転移性がん(LM.4T1)から分泌されるエクソソームを単離し、アレイ検索を行い、2者での違いを検索した結果、ヒストン分子の発現に大きな違いがあることを見出した。・アレイ検索の結果をもとにタンパク発現をWestern blotで比較検討したところ、アレイ結果と同様、HIST3H2Aの発現量に差異を確認した。・現在、HIST3H2A発現の違いが細胞機能に与える影響を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにTriple negative乳がん細胞株4T1 とエクソソームに関する英文論文2報を報告した。継続して、Triple negative乳がん細胞株4T1 細胞由来高転移性がん(HM.4T1)と低転移性がん(LM.4T1)から分泌されるエクソソームの質的違いの検討から、ヒストン分子に着目しており、ヒストンの新たな機能解析に取組んでいる。また、SPRED2に着目し、エクソソーム分泌の変化による腫瘍微小環境への影響についての研究が進行し新たな知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
●Triple negative乳がん細胞株の2亜集団の違いとしてヒストン発現の違いが、どのように腫瘍の増殖・転移能に影響を及ぼすかを検討する。 ●エクソソーム分泌のメカ二ムズとして、がん増殖・進展に関わる、ERK-MAPKが考えられており、ERK-MAPKの内因性抑制因子であるSpred2によるエクソソームの分泌抑制を明らかにしている。SPRED2によるエクソソーム内包物の違いによる腫瘍周囲環境の変化をマクロファージに着目して進める。
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