難治癌において次世代シークエンス解析の発展により、VUS(Variants of Uncertain Significance)と呼ばれる臨床的意義不明のバリアントが多く見つかっており、機能未知の遺伝子の変異の他、例えば癌抑制遺伝子として有名なp53などにおいても臨床的意義不明のバリアントが数多く存在する。従ってこれらの機能解析はがん治療へ向けた新たな標的としての可能性が期待されている。しかしながら、VUSの機能解析を実施する為にはin vitroで操作可能な癌オルガノイドを対象とした効率の良い遺伝子改変技術の開発が不可欠である。本研究課題では、癌の個性の実態解明へ向け、癌オルガノイドを対象とした効率の良い遺伝子改変技術の開発を目指す。本年度は現状でプライマリ癌細胞を対象に遺伝子改変は数%程度と極めて効率が悪く、原因として遺伝子導入効率が悪いこと、遺伝子組み換え効率が悪いことなどが挙げられる。エレクトロポーレーション法の他、遺伝子導入試薬の検討、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる導入を検討したが、大きく改善するものではなく、エレクトロポーレーション法が最善であった。したがって、導入配列側の工夫を加えることで改善を試みた。1塩基置換は最新の技術であるPrimeEditor法を用いても数%程度という点は大きく改善はしなかった。蛍光タンパク質のノックインについては数%程度の効率でもソーティングなどの分離方法の組み合わせで実施可能であった。また、ノックアウトについても予めCAS9の導入細胞を選別することで実用的に実施可能であった。
|