研究実績の概要 |
若年マウスの血液に暴露された老齢マウスは、認知機能が若返る。この知見は血液中に若返りを誘導する因子が存在することを示唆する。間葉系幹細胞が分泌するエクソソームの移植のみで間葉系幹細胞移植と同等の器官再生能が発揮されるという報告がある。山中カクテルと呼ばれるOSKM(OCT3/4, SOX2, KLF4, c-Myc)の過剰発現によるリプログラミングによって、体細胞が多能性状態に変換可能であることが示されたが、山中カクテルの一過性過剰発現は細胞を若返らせる。以上の知見から我々は、老化した間葉系幹細胞をリプログラミングによって若返らせ、細胞自体、あるいはエクソソームを含む細胞上清を老化マウスに戻し移植することにより、レシピエントマウスを若返らせる効果が得られるのではないかと着想した。本年度は老化した脂肪由来間葉系幹細胞のリプログラミングによる脂肪由来間葉系幹細胞 rejuvenationの方法確立を目指して山中カクテル一過性過剰発現の条件検討を開始しが、山中カクテルによる間葉系幹細胞の若返り効果の確認をするには至らなかった。一方、我々はすでにPAI-1阻害剤が細胞senescenceを予防することを見出しているが、これを間葉系幹細胞に作用させてRNA-seq解析を行った。その結果、細胞の加齢に伴い変動するGDFシグナル、MMPシグナルなどの経路が影響されることが見いだされ、PAI-1阻害剤が間葉系幹細胞のrejuvenationを誘導する可能性が示唆された。2024年度はさらにシグナル解析を進めるとともに、細胞のエピジェネティッククロックに対する影響を検証する。
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