全身の老化の原因として、SASP(senescence-associated secretory phenotype)を示す細胞が、生体に残るのが主な減とされている。皮膚の老化においても、真皮内での老化細胞の蓄積と、それに続くSASPによる炎症、線維化が機序となっていると考えられている。そのため、SASP状態となった細胞を同定し炎症の抑制ないし、SASP細胞の除去を行うことで皮膚の老化を予防、阻止することを目的とした。本研究では、細胞老化モデルと通常のヒト線維芽細胞の発現遺伝子をマイクロアレイ法にて比較することにより、老化細胞を特異的に標識するマーカーを探索した。線維芽細胞細胞膜表面に発現する因子に絞り込み、これら遺伝子のコードするタンパク質が実際に細胞膜表面にあることを分離同定した。その後、免疫染色、リアルタイムPCRによっても、老化細胞膜特異的なマーカーであることを確認した。老化細胞が標識できることが確認し、その標的に対するモノクローナル抗体を購入し、抗体には治療方法により物質をコンジュゲートした。抗体に対する物質の結合の可否や割合については、免疫沈降法により確認した。 培養線維芽培養細胞を使用し、分裂老化を起こした細胞と、元の若い細胞に対し、本抗体を用いて光線暴露を行い、細胞の殺し分けができるか否かを確認したところ、若い細胞では細胞死はほとんど見られなかったが、老化した細胞で多くの細胞死の惹起を惹起することが確認できた。
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