研究課題/領域番号 |
22K19599
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西山 正章 金沢大学, 医学系, 教授 (50423562)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 精巣-脳連関 / 自閉症 |
研究実績の概要 |
自閉症はコミュニケーション能力の質的障害および常同・反復的な興味・行動で特徴づけられる発達障害であり、発症メカニズムの解明と治療法の開発が強く求められている。近年、自閉症患者で大規模なゲノム変異検索が行われた結果、クロマチンリモデリング因子CHD8が自閉症患者で最も変異率の高い遺伝子として報告された。申請者らのグループは長年にわたりCHD8の研究を行っており、CHD8変異を再現したマウスが社会的行動の異常や不安様行動の増加といった自閉症に特徴的な行動異常を示すことを世界に先駆けて発見した。その後の研究によって、自閉症原因遺伝子であるCHD8は脳以外の多臓器で重要な役割を果たしていることが判明した。われわれは、生殖細胞特異的にChd8を欠損させたマウスを作製し、クロマチンリモデラーCHD8がH3K4me3ヒストンメチル化酵素を転写的に制御することで、減数分裂の初期段階を保護することを明らかにした。生殖細胞特異的にChd8を欠損させると、減数分裂前期Iの初期段階で減数分裂が停止し、未分化な精原細胞が徐々に減少することで不妊になることがわかった。RNA-seq解析の結果、CHD8は精原細胞の精子形成遺伝子の広範な活性化に必要であることが示された。CHD8は、H3K4me3ヒストンメチル化酵素遺伝子、すなわちPrdm9とMLL関連遺伝子のプロモーターに直接結合し、その発現を制御する。CHD8は、精子形成遺伝子の活性化に必要な減数分裂関連遺伝子の転写開始部位と、減数分裂の相同組換えに必要な減数分裂特異的二本鎖切断部位の両方で、H3K4me3の修飾に寄与している。本研究により、CHD8が減数分裂に特異的なH3K4me3の制御において重要な役割を果たすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
われわれは、生殖細胞特異的Chd8ノックアウトマウスの作製に成功した。このマウスの解析から、CHD8はH3K4me3ヒストンメチルトランスフェラーゼを転写制御し、減数分裂の初期段階を保護する可能性が示唆された。これらの知見は当初の研究目的に適っているが、当初の計画よりやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
われわれが作製した生殖細胞特異的Chd8ノックアウトマウスを用いて、精巣でのCHD8機能が脳に及ぼす影響を解析することで、精巣-脳連関のメカニズムを解明する。さらに、精巣-脳連関に焦点を当てた治療介入によって、自閉症様行動が改善するかどうかを検証し、自閉症の新規治療法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
生殖細胞特異的Chd8ノックアウトマウスの作製と解析は、すでに予備的研究で進行中であったため、次年度使用額が生じた。本研究の主な目的である、精巣でのCHD8機能が脳に及ぼす影響を解析し、精巣-脳連関のメカニズムを解明するために、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用予定である。
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