研究課題/領域番号 |
22K19600
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 永輝 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (90620344)
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研究分担者 |
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 異所性骨化 / 空間的遺伝子発現解析 / イメージング質量分析 / 進行性骨化性線維異形成症 |
研究実績の概要 |
異所性骨化(HO)とは、生理的には骨が形成されない軟部組織内に骨が形成される現象である。外傷により局所的に形成する異所性骨化とは異なり、遺伝性疾患である進行性骨化性線維異形成症(FOP)はACVR1遺伝子変異(FOP-ACVR1)により、全身の線維性組織が進行性に骨化する疾患である。我々はFOP患者から樹立したiPS細胞を用いて、体外における実験系を確立し、HO誘発因子としてActivin Aの同定や治療のターゲットとしてmTORC1の阻害剤であるRapamycinを同定した。さらに、mTORC1の下流を解析する中、エネルギー代謝のリプログラミングが重要な役割を果たす知見を見出した。HO初期に浸潤する炎症性細胞、特にマクロファージも重要な役割を担うことが報告された。 本課題の目的は、薬剤誘導型FOP-ACVR1トランスジェニックマウスを用いて、空間的技術を駆使し、HO形成に寄与する起源細胞とマクロファージのエネルギー代謝のダイナミックや相互作用を解明することである。令和4年度は、空間的遺伝子発現解析(Visium)のプロトコールを確立した。具体的には、HE染色により凍結切片とFFPE切片を比較し、マウス骨格筋の分解能が高い画像を得るために、FFPE切片を採用した。また、接着テストとNGSライブラリ作製などの条件検討を行い、適切なプロトコールを確立した。また、エネルギー代謝状態を可視化するために、イメージング質量分析(IMS)を行った。得られたデータを元に、次元削減法(UMAP)の解析により、HO領域と正常領域の異なるパターンを可視化することができた。更に、遺伝子発現を単一細胞レベルで解析するために、マウスの骨格筋から単核細胞の単離からNGSライブラリ作製までのプロトコールを検討し、シングルセルRNAシーケンシングを行った。その結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間的遺伝子発現解析のために、技術的困難である各ステップをクリアし、マウス骨格筋に適切なプロトコールを確立した。さらに、イメージング質量分析も成功しており、空間的代謝物の解析が可能になった。当初は計画していなかったが、単一細胞解像度での遺伝子発現情報も統合させるために、シングルセルRNAシーケンシングも行っており、計画通り順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は前年度に引き続き、空間的遺伝子発現解析を修了させる。HOの前駆細胞の形態・増殖・遺伝子発現パターンの変化を経時的に解析する。同じように、マクロファージの各サブタイプの増殖・遺伝子発現パターンを経時的に解析する。イメージング質量分析のデータからエネルギー代謝に関連する代謝物を抽出し、HO形成の各段階における前駆細胞とマクロファージのエネルギー代謝状態を調べる。シングルセルRNAシーケンシングの解析を引き続き行い、各細胞種の割合・遺伝子発現の変化を解析する。これらの解析結果を統合させることで、FOP特異的エネルギー代謝を標的とした根拠を固めると共に、治療薬投与の適切なタイミングに関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 購入を必要とする消耗品の供給が、研究費使用可能な年度内に困難であったため、購入を令和5年4月以降に延期し、その額を次年度に繰り越して使用することとした。 次年度使用額の使用計画: 昨年度末に購入予定であった本研究を遂行するための試薬を予定通り購入し、研究を遂行する。
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