本研究の目的は、空間的技術を用いて異所性骨化(以下HO)の過程において起源細胞および炎症性細胞の両者を解析し、病態に関する知見を深めると共に、新規治療法の開発に繋がるシーズを取得することである。令和5年度は以下の研究を行った。 1.ドキシサイクリンの投与により全身性に変異型ACVR1が発現されるトランスジェニックマウスの腓腹筋に損傷を与えた後、HO形成の初期においてRNAを抽出し、Bulk RNA sequencingを行った。Gene Set Enrichment Analysisの結果、損傷により軟骨分化関連遺伝子群の発現の上昇と同時に、HOの起源細胞であるFibro/Adipogenic progenitor (以下FAPs)関連遺伝子群の発現促進が見られた。酸化的リン酸化の阻害剤IACS-010759(以下IACS)の投与によりこれらの遺伝子群の発現が低下した。FAPsのマーカーであるPDGFRαとミトコンドリア生合成のマーカーであるTOMM20の免疫染色により、FAPsの活性化および軟骨分化においてミトコンドリア生合成が促進されている結果が示された。 2.損傷を与えた筋肉のFFPE切片を作製し、空間的遺伝子発現解析(以下Visium)を行った。非損傷部位に比べて、損傷部位においてPDGFRα、TOMM20およびSOX9の高発現が確認された。 3.シングルセルRNAシーケンシング解析において、損傷によるFAPsの活性化のダイナミックを解析した。また、損傷により炎症性細胞であるマクロファージが劇的に増殖した。FAPsとマクロファージの各Clusterを解析し、損傷による経時的な変化を調査し、IACSが与える影響の詳細を調べた。
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