研究課題/領域番号 |
22K19605
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡部 圭介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50445350)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
熱傷を含む外傷、悪性腫瘍の切除後、先天性色素性母斑の治療等、皮膚を含めた広範な軟部組織欠損に対する治療が必要となるケースは多い。近年の治療技術の進歩、新規治療デバイスの開発によっても、いまだ治療に難渋することが稀ではない。手術侵襲を低減しドナー部位の犠牲を最小限にするべく、各種の人工真皮や自家培養表皮を移植する治療が行われているが、移植床からの血管新生が不十分であり脱落してしまうことが多く、治療の障壁となっている。つまり、移植後に「いかにして移植床からの速やかな血管新生を誘導するか」が治療の成否を分ける鍵となっている。申請者らは、当初血管網を含む移植材料の開発に取り組んでいたが、その過程で偶然、足場材料に管腔(チャネル)を作ると、細胞の有無によらず移植床からの血管新生が促進されるという現象を見出した。その知見をもとに、本研究ではチャネルを持つゲル素材によって軟部組織欠損を伴う組織の治癒を最適化することを目指している。これまでの研究によって、コラーゲンとフィブリンの混合組成を1:3の割合とすること、チャネルの直径を300μmとすることなど条件検討を行ってきた。その後、免疫不全マウスを用いて、皮下埋入モデル、皮膚創傷治癒モデルで本素材の特性解析を継続している。その結果、血管新生の程度で評価すると、治癒結果にばらつきがあることが分かったが、チャネル入口部がうまく開存した状態が維持されないケースが多いことが示唆された。そこで、ゲル作成後にアセトンで固化させることで改善を図った。今後、人工真皮など他の市販材料との比較、さらには虚血モデルを用いた解析について進める方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製するゲルの濃度やチャネルの直径など、調整すべき変数がいくつかあるものの、実験を繰り返すことによって概ね条件検討が終了しつつある。移植実験を繰り返す過程で、チャネル入口部のゲルが穴を塞いでしまうことによって開存が維持できないという可能性が示唆されたが、ゲル作成後に一定時間固化を行うことによって解決されたものと考えている。今後も予定通りの実験を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
今後、既成の人工真皮などの材料との比較実験を行う予定である。皮下移植モデル、皮膚創傷治癒モデルのほか、大腿動脈の結紮による下肢虚血モデルについても本素材の有効性について評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の次年度使用額が発生したが、ほぼ当初予定通りの使用状況である。
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