研究課題
本研究計画では、新たな感染症治療薬候補としての、細菌の耐性化を回避するファージの創出を目指した。近年、感染症の新たな治療戦略としてファージ療法が注目されている。背景には、多剤耐性菌の世界的な増加がある。ファージ療法は、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージの殺菌能を利用した治療法であり、ロシアなどの東欧諸国においてファージ療法は用いられてきた。また、2016年に米国にて、既存の抗菌薬で治療不可能であった超多剤耐性菌感染患者がファージ療法の実施によって完治し、大きな衝撃を与えた。通常バクテリオファージはヒトに感染しないため、特異性が高く薬剤耐性菌に対する新たな切り札となりうる。一方で、細菌はCRISPRCas機構などにより、ファージ耐性を獲得する。本研究では、ヒトの口腔や咽頭由来のレンサ球菌を宿主細菌として、日本の臨床分離株に分布するファージ配列の探索を行った。当教室で収集したレンサ球菌311株について、ドラフトゲノム配列の解読を行った。得られたシーケンスデータについて、fastpによるデータクリーニング、SKESAを用いたde novo assemble、Prokkaによる遺伝子のアノーテションを実施した。また、細菌種の同定はANI解析による95%以上の一致を判定基準とした。バクテリオファージ配列ならびにゲノム配列中のプロファージ配列の解析について、ファージのアノテーションツールpharokkaを用いた解析を行った。特に溶菌酵素について着目し、1896個のendolysin遺伝子、115個のamidase遺伝子、462個のholin遺伝子を得た。これらの遺伝子について分子系統解析を行い、レンサ球菌に分布しているファージの溶菌遺伝子についての系統関係を明らかにした。
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