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2022 年度 実施状況報告書

DNA損傷が司る”がんの共食い”を介した口腔がんの新たな高悪性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K19630
研究機関徳島大学

研究代表者

常松 貴明  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (70726752)

研究分担者 森岡 翔  岐阜大学, 高等研究院, 客員教授 (60870029)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード口腔がん / DNA損傷 / 共食い
研究実績の概要

死細胞は主にマクロファージや樹状細胞などのプロフェッショナルな貪食細胞によって貪食され、除去されることが 一般に古くから知られている。一方、がんの病理組織検体では非プロフェッショナルな細胞であるはずのがん細胞による死んだがん細胞の貪食像“がんの共食い”が認められる。この共食いは口腔がん、乳がんの高悪性度の組織型で高頻度に出現することが報告されている 。従って、高悪性度腫瘍に対する新しい治療ターゲットとしてのポテンシャルを有しているものの、その分子メカニズムはほとんど明らかとなっていない。そこで本研究では、“がんの共食い”ががん病態にどのような影響を与えているのか、またその分子メカニズムを明らかにすることを目的として研究を遂行する。特に本研究では、がん細胞に抗がん剤投与などによりDNA損傷誘導された状況下で貪食が活性化するという、研究代表者らが新たに見出した知見に着目する 。本研究は、遺伝子異常とは異なる視点から治療の難しい高悪性度腫瘍に対する新たな治療戦略を確立できる可能性を有する挑戦的な研究課題である。
今年度は、当初の研究計画に基づいて、主に①“がんの共食い”に重要なDNA損傷シグナルの同定と③“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析を実施した。①に関して、阻害剤やsiRNAを用いた解析結果から、ATM-Chk1経路の活性化が“がんの共食い”の促進に重要であることが明らかとなった。加えて、③の解析結果より、“がんの共食い”によって血管新生、腫瘍免疫制御、代謝の活性化などが誘導される可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は前述のように、当初の研究計画に従って研究を進め、ATM-Chk1経路の活性化が“がんの共食い”の促進に重要であることを明らかにすることができた。“がんの共食い”に重要なDNA損傷シグナルを同定することができたため、研究計画の目標を達成できたと考えている。また“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析に関しても、まずは少数のサンプルを用いたこれまでに研究代表者が取得済みのデータの解析を中心に行なったが、“がんの共食い”によってがん細胞が獲得する形質の一端が明らかとなってきており、順調に進んでいるのではないかと考えられる。

今後の研究の推進方策

次年度は、当初の研究計画に基づいて、②DNA損傷による“がんの共食い”に重要な貪食関連分子の同定を進める。また、本年度①で明らかにすることができたATM-Chk1経路によって、“がんの共食い”が促進される分子メカニズムを②の結果も踏まえながら、解析を進めたいと考えている。③の“がんの共食い”のトランスクリプトーム解析に関しては、本年度は既に取得済みの小規模の解析データを用いたが、次年度は実際にDNA損傷の有無も加え、新たにデータを取得し、DNA損傷の有無が“がんの共食い”のトランスクリプトームに与える影響の解析を進める。さらに具体的に“がんの共食い”によってがん細胞が獲得する形質に重要な分子群の機能解析をin vitroおよびin vivoで行い、検証を進める。

次年度使用額が生じた理由

本年度はまず予備検討も兼ねて、トランスクリプトーム解析は既に取得済みの小規模のデータを用いて解析を行い、予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。本年度の結果を踏まえて、次年度は新たにトランスクリプトームのデータを取得するため、繰り越して使用する。また、本年度の解析結果の具体的な検証実験をin vitroおよびin vivoで次年度遂行する必要があり、より費用がかかると予想されるため、翌年度分として請求した研究費を合わせて、使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Cancer cell‐derived novel periostin isoform promotes invasion in head and neck squamous cell carcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      Wenhua Shao、Tsunematsu Takaaki、Umeda Masaaki、Tawara Hiroaki、Fujiwara Natsumi、Mouri Yasuhiro、Arakaki Rieko、Ishimaru Naozumi、Kudo Yasusei
    • 雑誌名

      Cancer Medicine

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/cam4.5601

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Exposure to Multiwall Carbon Nanotubes Promotes Fibrous Proliferation by Production of Matrix Metalloproteinase-12 via NF-κB Activation in Chronic Peritonitis2022

    • 著者名/発表者名
      Tsunematsu Takaaki、Arakaki Rieko、Sato Mami、Saito Masako、Otsuka Kunihiro、Furukawa Yusuke、Taquahashi Yuhji、Kanno Jun、Ishimaru Naozumi
    • 雑誌名

      The American Journal of Pathology

      巻: 192 ページ: 1559~1572

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2022.07.009

    • 査読あり
  • [学会発表] Cell Cycle machinery unravels the molecular mechanism of Cancer cell cannibalism2022

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Tsunematsu, Naozumi Ishimaru
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学学会年会
  • [学会発表] Exposure to Multi-Wall Carbon Nanotubes Promotes Fibrous Proliferation by Production of Matrix Metalloproteinase-12 via NF-κB Activation in Chronic Peritonitis2022

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Tsunematsu, Rieko Arakaki, Mami Satoh, Kunihiro Otsuka, Naozumi Ishimaru
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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