研究課題/領域番号 |
22K19654
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 加熱式たばこ / IQOS / 胎児期曝露 / 性分化関連因子 / sry |
研究実績の概要 |
妊娠中の喫煙が早産や子宮内胎児発育不全などのリスク要因となり、胎児に悪影響を及ぼすことは広く知られている。また、近年では紙たばこと比べて有害成分が少ないとされる加熱式たばこの普及が急速に進んでいる。加熱式たばこのマウス胎児期曝露が出生マウスの雄性生殖機能に悪影響を及ぼすことを明らかにしてきたが、その発生メカニズムは不明であった。そこで、妊娠マウスに加熱式たばこを曝露し、雄性胎児の遺伝子発現への影響を評価し、出生後に生じる雄性生殖機能の悪化のメカニズムを検討した。 ICR系妊娠マウス15匹を用い、加熱式たばことしてIQOSを用いた。コントロール群、IQOSの2回曝露群 (2IQOS群)、IQOSの7回曝露群(7IQOS群)に分け、1群5匹とした。IQOSの曝露にはたばこ煙発生装置にてそれぞれ妊娠7、13日目に計2回、妊娠7~13日目に計7回、IQOS気化蒸気吸入曝露を行った。妊娠14日目に胎児を摘出し、雄性胎児で発現する遺伝子の解析を、DNAマイクロアレイにて行った。 2IQOS群において、雄性胎児重量がコントロール群より23.2%有意に低下した (p<0.05)。DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行ったところ性分化関連遺伝子であるsryの発現誘導が認められた。sryは、マウスにおいて胎齢11.5日目で一過性の遺伝子発現を認め、胎齢14.5日目ではほとんど発現が認められなくなることが明らかになっている。しかし、2IQOS、7IQOS群に共通して発現誘導が認められたことから、性分化の遅延が生じている可能性が示唆された。これらの知見から、胎児発育が遅滞している可能性が考えられ、その結果として、出生後の雄性生殖機能への影響が生じる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱式たばこの胎児期曝露により、胎児性分化関連因子の発現変動および胎児重量の低下が認められた。このことは、胎児の発育が遅滞していることを示唆しており、出生後で生じた影響発生機序の一端であると考えられる。当初計画の通り、研究を推進し、一定の知見を得ることができ、次年度、当初計画に従いさらなる影響解明を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
発現変動が認められた性分化関連因子sryは胎齢11.5日で発現が最大となる。そこで、加熱式たばこの胎児期曝露を行い、胎齢11.5日齢におけるsry遺伝子及びその他の遺伝子発現等を解析することで、加熱式たばこの胎児期曝露により胎児発育不全が生じているかについて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に解析予定であった項目を次年度にまとめて行うことで消耗品等を効率よく使用できるため、次年度に使用することとしたため。また、得られた成果について、次年度得られた知見とまとめて学会発表等を行うこととしたため。
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