研究課題
マラリアは致死性の寄生虫疾患で世界三大感染症の一つである。最も重症度が高く、分布域の広い熱帯熱マラリア原虫はこれまでの全ての薬剤に耐性化している。耐性状態を簡便に検出できる遺伝マーカーは極めて有用なツールだが、現行の耐性マーカーは、自然界での薬剤耐性マラリアの拡がりを監視するツールでしかなく、耐性の出現そのものを未然に予測することはできない。薬剤耐性マラリアが自然界に出現する前に検知できる、次世代型の耐性「予測」マーカーの開発が本研究の目的である。第一の目標である加速進化システムの構築については、CRISPR/Cas9によって3D7株のDNA polymerase δに変異(D321AとE323A)を導入、最終的に4つの熱帯熱マラリア原虫ミューテータークローンの作成に成功した。これをもちいた加速進化システムによって、各種抗マラリア薬に対する耐性株の作成が進行中である。耐性進化解析のために全ゲノム、および網羅的転写データを決定し、二年目に解析予定である。この解析のためのプログラムについては、分担研究者によって基本的骨格がほぼ終了し、変異蓄積シミュレーションプログラムの開発も完了した。これらを用いることによって、感受性から耐性獲得に至る進化時間軸に沿った耐性関連変異の蓄積を遺伝子毎に推定できる可能性が高い。
2: おおむね順調に進展している
一年目の目標として、熱帯熱マラリア原虫のミューテーター化による加速進化システムの構築があるが、それは完全に達成した。
1加速進化システムによって既存抗マラリア薬への耐性原虫の創出、単離が2023年度の目的である。その後、段階的な耐性能獲得におけるポイントでのゲノム、網羅的な転写解析によって、耐性に関与する遺伝子群を同定する。さらに、それらについてゲノム編集によって機能を明らかにしたい。
ミューテーター原虫の作成に相応の費用を見積もっていたが、予想に反してすぐに作成することができた。次年度に持ち越した助成金を原虫の改良に使用する予定である。、
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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