研究課題
PAPは舌癌術後、脳血管障害後遺症、加齢に伴う機能低下による嚥下障害ならびに構音障害に対するリハビリテーションにおいて代償的アプローチとして用いられている。しかし、明確な適応基準や製作法は明らかではない。今年度は前年度に加えて患者数を増加し、PAPを製作するときの臨床的な術式とPAPを装着したときの機能の変化についてさらに検討した。対象となった患者は、5名の脳血管疾患の後遺症による構音障害を有する患者、5名の舌癌術後で構音障害または嚥下障害を有する患者、5名の加齢に伴う口腔機能低下により嚥下障害または構音障害を有する患者、計15名であった。形成用材料として当初計画していた低触点のワックスを用いる方法に加えて、光重合レジンを用いた製作法についても検討した。機能評価として舌圧測定、反復唾液嚥下テスト法(RSST)、改訂水飲みテスト(MWST)、嚥下音の聴診、パラトグラム、オーラルディアドコキネシス、発語明瞭度検査を行い、一部の患者では嚥下内視鏡検査も行った。その結果、ワックスを用いるPAPの製作方法は質の高いPAPを製作できるが製作に日数を要するが、仕上がりが良好であること。光重合レジンを用いることにより即日で質の高いPAPの製作が可能であるが、経時的な劣化はワックスを原型として加熱重合レジンで製作したPAPよりも劣化が早いことが観察された。PAPや舌補綴装置の製作にあたり、構音検査としてパラトグラム、オーラルディアドコキネシス、発語明瞭度検査が有効であった。また、嚥下機能検査として舌圧測定、RSST、MWST、嚥下音の聴診、嚥下内視鏡検査が有効であった。
3: やや遅れている
抵触点のワックスを用いたPAPの製作方法は製作日数を要したため、光重合レジンによる製作法を検討したところ、即日で製作が可能となった。しかし、患者数が限られているため当初の計画よりも進行が遅くなっている。
1)これまでの研究結果を参考として、舌圧測定、反復唾液嚥下テスト法(RSST)、改訂水飲みテスト(MWST)、嚥下音の聴診、パラトグラム、オーラルディアドコキネシス、発語明瞭度検査、嚥下内視鏡検査の改善を図ると共に、患者数を増加する。2)嚥下造影検査を追加する(Videofluorography:以下VF検査):①誤嚥、②嚥下後の口腔残留、③嚥下後の咽頭残留を(-:なし、+:ある、++:多い、+++:非常に多い)で判定する。また、それぞれの試料を④嚥下し切るまでに要した嚥下回数を喉頭挙上の状態から測定する。⑤口腔通過時間および咽頭通過時間:VF画像をフレームプレート30fpsでコンピューターに取り込み分析を行う。
研究計画の実行に遅れが生じているため、予算の執行が完結しなかった。次年度に遅れている部分を遂行する計画である。
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