研究課題/領域番号 |
22K19664
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小椋 康光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (40292677)
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研究分担者 |
永澤 明佳 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30536735)
山岸 由和 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (50834470)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 低体温症 / 災害関連死 / メタボローム / LC-MS / 法中毒学 |
研究実績の概要 |
風水害や巨大地震などの自然災害を直接的な原因とする災害関連死は異常死ではあるものの、一見すると原因が明らかで、死者数も多数に及ぶことから、死因究明に必要な情報を必ずしも得ていないこともある。本研究では、“災害関連死メタボローム”という概念を着想し、災害関連死の死因究明のために、より定量的かつ定性的なエビデンスを得ることを目的とし、法中毒学の実務を裏付ける学理や技術を体系化するための端緒となる研究を実施することとしている。 低体温に対する最初の生体防御反応は、立毛筋の収縮による“鳥肌”であり、続いて骨格筋の震え(shivering)が起こる。さらに低体温が進行すると、意識混濁や意識消失が起こり、エネルギー代謝の低下も生じる。このような病態進行を考え、まずは骨格筋細胞、神経細胞及び肝細胞を由来とする培養細胞を用いた実験を実施した。 ヒト肝がん由来細胞を再現的に低温下で培養可能な条件を構築するための実験にまずは着手した。その結果、30℃の低温条件下で培養することにより、不要な細胞死を誘導することなく低温下での応答が観察されることを確かめた。この培養条件下において、メタボロームを高分解能の質量分析計を備えたLC-MSにより解析した。その結果、特定のアミノ酸の増減が確認された。現在、特定のアミノ酸の細胞内濃度が変動する機構を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温条件下の培養によって、特定のアミノ酸が増減することを再現的に確認できている。当初の計画では、in vitroの検討を初年度に行う予定であったので、当初の予定通りに進んでいると考えている。一方、当初の予定ではアミノ酸以外にも脂質、糖質及びミネラルの代謝にも変動が現われていることを想定していたが、変動が顕著で再現的に確認できるアミノ酸に焦点を当てて研究を実施したことによって、分析に係る費用を効果的に圧縮することもできている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の研究計画に沿って、検討を進めていくことを想定している。特に、メタボローム解析から注目すべき因子が特定できているので、それに焦点を当てた解析を継続していく。in vivoでの評価も二年度目の計画として予定しており、状況に応じて評価を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を上回る効果的かつ効率的な分析を実施できたため、分析に係る費用を圧縮することに成功できた。翌年度は、本年度に得られた成果を検証し、その機構を解明するため、さらなる分析を実施するため、翌年度分と合わせて執行する予定である。
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