研究課題
人体への放射線被ばくの晩発影響として最も重要なのは発癌であるが、癌は最もよく見られる疾患の一つであり、被ばくした「集団」の癌発症数の増加は観察可能でも、「あるひとつの癌」が放射線で引き起こされたものか、その他の原因で起きたものかを区別する方法は今のところない。本研究では、個々の癌における放射線影響の有無を調べる手段を提供するため、「細胞の種類によって放射線によるゲノム刻印の残る場所が異なっているのではないか」という仮説を検証することを目的とする。本年度は、すでに他研究で得られているBJ1-hTERT細胞に放射線を照射して得られたHPRT変異クローンの欠失を解析しつつ、他細胞種でほぼ半数体モデル細胞株であるHAP1細胞に放射線照射し、HPRT変異クローンの作成を行なった。実際に全ゲノム解析で得られた構造異常(欠失)の断端と、ENCODE上に登録されているCTCF結合部位等の物理的な距離を計算し、さらにこれをランダムに生じさせたゲノム上の欠失に対しても行い、それらを比較するソフトウェアを開発した。HAP-1細胞は、コントロール(非照射)、1、2、3、6、9 Gyのガンマ線照射(137Cs)を行い、それぞれ多数の6-thioguanine(6-TG)耐性クローンを樹立した。これらのクローンに対して、HPRT遺伝子ローカス周辺のSequence Tagged Siteの有無をPCRで解析し、クローンの選別を行った。
2: おおむね順調に進展している
別細胞腫のクローンも順調に多数が得られ、基礎的な解析も進んでいる。
得られたクローンの全ゲノム解析を行っていく。
次世代ゲノム解析の前に、クローンが同じ細胞由来でないか区別する必要があると考え、PCR等の安価な解析手法を用い、クローンの特徴づけを優先させたため。次年度の次世代ゲノム解析に使用する。
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