研究課題/領域番号 |
22K19679
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
中山 昌喜 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 分子生体制御学, 准教授 (50876000)
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研究分担者 |
中岡 博史 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 部長 (70611193)
永生 高広 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 講師 (70421964)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 浸潤性膵管癌 / 腎細胞癌 / 包括的高感度転写産物プロファイリング法 / 次世代シーケンシング / 高感度発現解析 |
研究実績の概要 |
早期発見や再発の早期検知に有効な診断法がない癌腫は多く、浸潤性膵管癌(以下「膵癌」)と腎細胞癌(以下「腎癌」)はその代表例である。本研究は、自覚症状に乏しいこれらの癌の二次予防に向けた診断技術の開発を目的としている。我々は、患者の手術検体組織と末梢血検体で、包括的高感度転写産物プロファイリング(HiCEP)法と次世代シーケンシング (NGS)を組み合わせた新規高感度解析法を行うことにより、膵癌や腎癌に特異的な分子探索を行ってきた。 HiCEP法は、本邦発の遺伝子発現解析技術であり、ATGCの4塩基全ての組み合わせ(4の4乗=256通り)に相当する256対のプライマーを用いてcDNAを網羅的に増幅したもの(“HiCEPフラグメント”と呼ばれる)から、高感度に、かつ漏れなくmRNAの発現量を鋭敏に測定する技術である。 これまで膵癌は約90症例、腎癌は約100症例を収集することができており、うち膵癌、腎癌とも6症例分についてHiCEPフラグメントの作成が完了した。この結果とNGS法から、長短を問わない全発現分子を分子疫学的手法により網羅的にカタログ化・データベース化し、病期診断や病理診断、治療効果等の臨床データとの関連を解析・検討し、膵癌及び腎癌から非癌部組織と比較して発現量が大幅に増加する未知の遺伝子を複数個同定し、他の症例検体でも再現できたことから、この手法の開発についての論文を現在準備中である。 なお、このNGS-HiCEP法の限界は、NGSではHiCEPフラグメントのうち、400塩基対程度までのcDNAしか検出できなかった点にある。しかし、NGSの性能上昇に伴い、600塩基対程度までの長いDNAを読むことが最近可能となった。申請者らはこの技術を用いて、今後、長短いずれのHiCEPフラグメントについても発現量のデータベース解析ができる診断技術の開発も目指してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HiCEPフラグメントの作成が完了し、NGS法から、長短を問わない全発現分子を分子疫学的手法により網羅的にカタログ化・データベース化できた。ここから、病期診断や病理診断、治療効果等の臨床データとの関連を解析・検討し、膵癌及び腎癌から非癌部組織と比較して発現量が大幅に増加する未知の遺伝子を複数個同定し、他の症例検体でも再現できたことから、この手法の開発についての論文を現在準備中である。 以上の理由により、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、現在準備中の”NGS-HiCEP法”についての論文報告を行う。 また、NGSの性能上昇に伴い、long-read NGSと呼ばれる、600塩基対程度までの長いDNAを読むことが最近可能となった。そこで、これまで読み切れてはいなかった長いHiCEPフラグメントについても高感度解析を行える“Extended-NGS-HiCEP法”を追究することにより、膵癌・腎癌特異的分子の「完全な」網羅的探索を容易にし、未だに確立されていない早期診断や再発検出への非侵襲的診断技術の開発を行う。そして、長短いずれのHiCEPフラグメントについても発現量のデータベース解析ができるような診断技術の開発も進めてゆく。 将来的には、これらの研究を通して、未だに確立されていない早期診断や再発検出への非侵襲的診断技術の開発を行う。これらの技術に加え、ゲノム疫学データを利用することにより、予後予測や治療法の有用性の予測などの臨床応用に繋げることができ、ひいては、癌患者の予後の向上に寄与することが期待できる。このような研究成果は、膵癌や腎癌だけでなく、他の癌腫への応用にも繋がる。本研究では、ヒト研究においては初めて行われる新規高感度解析法を採用しており、癌の二次予防を含めた臨床応用を目指したチャレンジであり、挑戦的研究としての意義も大きいものとなると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的大流行のため、研究代表者および研究分担者の手続き等に遅れが生じた点がある。今後、各種消耗品の購入費用のほかに、旅費、国際誌への論文投稿のための校閲費・印刷費・研究成果投稿料としての謝金・その他の費用として使用する予定である。
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