本研究では、無症状の住民を対象に大腸内視鏡検診を実施した大島研究において、検診前に収集した生活習慣・食事に関するアンケート調査結果、便および血漿検体の分析結果を用いて、食事因子・腸内細菌・代謝物と大腸腫瘍リスクとの関連を複合的作用の観点から検討する事を目的としている。大腸腫瘍症例125人(がん30例、高度異形腺腫26例、10mm以上の腺腫69例)とランダムサンプリングした対照群194人の計319人のうち、血漿検体が利用可能な303人を対象に、胆汁酸を含む約500の代謝物を対象に液体クロマトグラフ質量分析計による測定を実施した。その結果、合計14種の胆汁酸濃度を取得した。そのうち、5種(Chenodeoxycholic acid、Glycocholic acid、Glycochenodeoxycholic acid、Glycolithocholic acid sulfate、Glycoursodeoxycholic acid)は、すべての検体において検出下限値以上の値であった。その他、検出下限値以上の値の占める割合が、対象集団の90%以上であった胆汁酸は4種(Deoxycholic acid、Taurochenodeoxycholic acid、Glycodeoxycholic acid、Taurodeoxycholic acid)、70%以上が3種(Cholic acid、Taurocholic acid、Taurolithocholic acid)、のこりは64%(Glycolithocholic acid)と46%(Tauromurocholic acid)であった。大腸腫瘍症例群と対照群の間で、これらの値を単変量解析にて比較したところ有意な差は認めなかった。さらに肉類・脂肪酸摂取量や腸内細菌叢のデータも含めて、大腸腫瘍リスクとの関連を検討する。
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