研究課題/領域番号 |
22K19693
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
神谷 重樹 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60379089)
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研究分担者 |
徳本 勇人 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70405348)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / NASH / メダカ |
研究実績の概要 |
本年度は,まずマイクロプラスチック(MP)として,粒径10-45 μmまたは425-500 μmの蛍光ポリエチレン粒子を通常餌に混餌して Cabメダカに投与し,腸内での動態を確認した。その結果,いずれの蛍光粒子についても投与終了後も糞便中に存在が認められ,粒径の小さい方が糞便への排出が長く見られたことから,腸内の貯留時間が長いことがわかった。投与終了後解剖して調べたところ,腸内に蛍光粒子が留まっており,粒子の小さい方が多く留まっていることが確認された。他の組織への移行は認められなかった。次に,3ヶ月齢のCabメダカを使用し粒径10-45 μmの蛍光ポリエチレン粒子を高脂肪食(HFD)に混餌して12週間投与した群(HFD+MP群)と,HFDのみ12週間投与した非混餌群(HFD群)との比較を行った。体重・肝臓重量の変化,肝臓の組織染色,qPCR法による遺伝子発現の評価,腸内細菌叢解析(16Sアンプリコン解析)により病態を解析した結果,体重・遺伝子発現の結果はMP摂取によって病態が増悪している傾向が見られたが明確な差は見受けられなかった。腸内細菌叢解析の結果,HFD群とHFD+MP摂取群の間で構成する菌種や偏りに変化があり,MP摂取による影響が見られた。一方,環境水中に2ヶ月程度,上記と同じポリエチレン粒子を放置し,粒子表面の細菌叢解析を試みたが,回収できるDNA量が極端に少なく,細菌叢解析として十分なリード数が得られなかった。また環境水中の細菌叢と比較しようとしたが,こちらは大量の水をろ過して回収しないといけないことがわかり,更なる実験方法の検討が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粒径の違いについては,蛍光ポリエチレン粒子を用いて体内動態の違いやNASHモデルメダカへの投与による病態を解析できた。一方,材質の異なる粒子については,先行研究で用いられているマイクロプラスチックのモデルとされるポリスチレンなどの粒子が輸入されていないことやコロナ禍で生産されていないこと,極端に高価であることもあり難しく,現在5-10 μmの非蛍光ポリスチレンについて検討を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在研究を進めている粒子系の非常に小さいポリスチレン(5-10 μm)をMPのモデルとして解析する。NASHモデルメダカとして、本年度と同様にMPを高脂肪食に混餌し,8 - 12週にわたり給餌する。給餌終了後,腸内代謝物を回収し,NGSにより腸内細菌叢を解析する。また肝臓を採取し,組織切片をHE染色及び脂肪染色,さらにNASHの病態マーカーの抗マクロファージ抗体で免疫染色し病理診断する。また肝臓または血中のTG,コレステロール,総脂肪酸量をGC-MSやHPLCにより定量する。さらに,肝臓からRNAを抽出し,SREBPなど脂肪酸代謝に関わる遺伝子や炎症生サイトカインの遺伝子の発現をqPCR法により定量する。肝臓のしたタンパク抽出液を用い、qPCR と同様の遺伝子の産物や線維化のマーカータンパクなどに対する抗体のウェスタンブロッティング法でこれらを評価する。これらによりMP混餌と非混餌でNASHの病態の違いがあるかを総合的に判定する。また並行して,環境水中に放置したマイクロプラスチックでの細菌叢解析を実施する。さらに可能であれば,脂肪合成や肝線維化に関わるタンパクと蛍光タンパクを融合したタンパクを発現するトランスジェニックメダカを作製し,イメージングにより評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部当初計画通りに進まない実験があったため。
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