研究課題/領域番号 |
22K19709
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
木場 智史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40565743)
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研究分担者 |
吉村 祐貴 鳥取大学, 医学部, 助教 (50771242)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | FosTRAP / 遺伝子ノックインラット / 運動 / 交感神経 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
精神病態下で認められる自律神経機能不全は意欲低下の原因かつ結果である.しかし意欲と自律神経機能との連関メカニズムは不明である.本研究では申請者が新規作出したFosCreERT2ラットを用いて独自に確立したラットFosTRAP法(JSPS科研20K21759)を活用することで,運動意欲の亢進によって興奮する中枢神経を特定し,その神経集団による自律神経制御能を調査する.さらに,その特定神経集団が意欲と自律神経機能との因果性を担う脳実体であるとの仮説を検証することで,現代ストレス社会の病とも言える意欲低下と関連した精神病態の新理解を目的とする.2022年度には,運動意欲を伴う随意的トレッドミル運動によって興奮する中枢神経を,ラットFosTRAP法によるレポータータンパク質の発現によって標識し,その神経分布を全脳的に調査した.自律中枢とされる脳領域に焦点を絞って精査したところ,特に視床下部の脳弓周囲領域(PeFA)において運動意欲興奮性神経が検出された.興味深いことに,この運動意欲興奮性PeFA神経は,ある日に行った運動に伴って興奮しても,三週以上間隔をとった別日に行った運動の機会では必ずしも興奮しなかった.二度の運動機会でともに興奮したPeFA神経は,一回目の運動で興奮した神経のうち約二割程度であった.成長や老化などの時間経過に伴い,運動意欲を伝達する神経回路は経時変化する可能性が示唆され,この仮説の検証にはカルシウムイメージングなどを用いて同一神経の興奮性を長期間継続して観察・解析する研究が必要と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度にはラットFosTRAP法の手順の見直しからその方法を洗練させたとともに2023年度の計画研究のための基盤となるデータを得た.
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今後の研究の推進方策 |
運動意欲興奮性PeFA神経の長期的(週~月単位)な活動検出(カルシウムイメージング)および活動操作(光/薬理遺伝学操作)によって,意欲の上昇・低下と交感神経活動の変化が人為的に生じるかを検証する.また,申請者の異動に伴う研究環境の変化により,P2レベルでの遺伝子組換え実験を行うことが可能となった.これまでの研究成果を基盤としたうえで,新研究環境において構築する生体信号の長期記録の実験系を活用し,将来的には運動意欲興奮性PeFA神経による意欲と交感神経の制御能に対する加齢・病態・回復の影響調査へと研究を発展させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に収集したデータ量が想定していたよりも多量であったため,データ解析により注力した.そのため,実際に行った実験量が予定よりも少なく,実験遂行に必要となる試薬や消耗品等の購入費用が抑えられた.2023年度には予定していた計画研究を遂行するとともに,2022年度の成果を踏まえてその科学的必要性から新たに企画した研究(カルシウムイメージング,長時間生体信号記録)の推進のために,当該助成金を使用する.
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