本研究では,科研課題20K21759において作出した遺伝子改変Fos-CreERT2ラットを用いて確立したラットFosTRAP法(何らかの外的刺激に興奮する神経細胞のみへの遺伝子工学的介入を可能とする手法)を活用し,意欲行動(随意運動など)によって興奮する視床下部神経の交感神経活性能を調査した.この遺伝子改変ラットの視床下部脳弓周囲領域(“意欲”行動の表出に重要な役割を果たし,また意欲が必要となる随意運動時の交感神経制御の一端を担うオレキシン産生神経が局在する)にCre 依存にチャネルロドプシン をコードするアデノ随伴ウイルス液を注入した.そして随意的走行運動に伴って興奮する神経細胞核内にCreを移行させるために,随意的走行運動中にタモキシフェンを腹腔内投与した(FosTRAP).FosTRAP処置後に視床下部脳弓周囲領域のFosTRAP神経を光遺伝学刺激したところ,その集団には交感神経活性能と抑制能を持つものがそれぞれ存在することが示唆された.具体的には,この神経集団の細胞体を刺激したところ交感神経活動の低下が生じた一方で,そのうち延髄腹外側野への投射亜集団を選択的に刺激すると有意な昇圧が認められた.また,FosCreERT2ラットを作出する過程で作出したFosノックアウトラット(ホモ)で認められた,切歯の欠損など骨格系の発育不良に関する知見を誌上発表した(Yoshimura et al. Exp Anim 2023).
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