研究課題/領域番号 |
22K19718
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
青井 渉 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60405272)
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研究分担者 |
佐久間 邦弘 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (60291176)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 硫黄代謝 / 抗酸化システム / 運動 / 不活動 |
研究実績の概要 |
硫黄原子が過剰に付加されたアミノ酸やペプチド,タンパク質は高い求核性を有し,エネルギー代謝や生体防御機構を制御して恒常性の維持に関与することがわかってきた。しかし,骨格筋における超硫黄化合物の動態,機能については不明である。本研究は,動物実験モデルを用いて,運動,不活動,食習慣による骨格筋硫黄化合物の代謝変動および機能性について検討することを目的としている。 マウスに単回運動あるいはトレーニングを負荷した後,骨格筋の活性硫黄種産生酵素,過硫化タンパク質,硫黄含有化合物を測定した。単回運動,トレーニングいずれにおいても,骨格筋のCysteinyl tRNA synthetase 2(CARS2)発現量が増加した。また,27種の硫黄含有化合物が検出され,単回運動によって,グルタチオンジスルフィドの増加,酸化型グルタチオンモノスルフィドの減少を認めた。トレーニングによっては,硫化物イオン,システインおよび酸化型グルタチオンの増加を認めた。マウス右後肢を固定し,7日後に採取した骨格筋を解析したところ,CARS2および3-Mercaptopyruvate sulfurtransferaseの発現量が固定脚で高値を示した。運動,不活動いずれのモデルにおいても,複数の過硫化タンパク質が検出された。さらに,高脂肪食(60%エネルギー)を12週間摂取させたマウスの腓腹筋においてもCARS2発現量の増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
運動,不活動,高脂肪食習慣における動物モデルを用いた試験を進めることができた。これらの試験の結果から,骨格筋硫黄代謝の特徴を検証することにより,今後の研究の道筋を設定することができた。一方,機器の故障や実験のトラブルシューティングに時間を要したため,当初の計画からやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
超硫黄化合物は抗酸化システムや代謝システムの制御に寄与することが知られる。そのため,これまでの研究で観察された骨格筋硫黄代謝の変化が,抗酸化能や代謝能に及ぼす影響について検討する。また骨格筋において,硫黄分子の結合した過硫化タンパク質が複数認められたため,運動・不活動,高脂肪食,加齢によって変化するものに着目し,同定を試みる。さらに,動物試験の結果を踏まえ,超硫黄化合物やそのドナー,硫黄転移酵素阻害剤を用いた培養細胞試験を実施し,エネルギー代謝,タンパク質代謝,酸化ストレス指標,炎症指標に及ぼす影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室における機器(純水製造装置)に不測の故障が生じ,当装置の修理を行う必要が生じたため,検体の生化学分析に関わる実験工程が遅延した。また,タンパク質検出の実験において,うまく検出ができず,計画通りに進めることができなかった。試行錯誤の末,条件を調整することで解決できたが,そのトラブルシューティングに時間を要し,当初予定していた実験が遅れた。機器の復旧,および当該実験条件の調整は実施済であり,当初の予定通り,次年度に検体の分析を進める計画である。
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