研究課題/領域番号 |
22K19727
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
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研究分担者 |
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (30722102)
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 身体協応 / 非線形科学 / 仮想空間 / VR / 協応動作 / 分岐理論 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究では、特に音に対する人間の認知機能に注目した。人間が周囲の状況を把握する際、聴覚による音の認知は、視覚に次ぐ重要な位置を占める。特にプロの演奏家は音階や音質に対する感覚が極めて高く、その認知機序を深く知ることは、少人数集団の協応パターンの創発理解に重要である。そこで複数のピアノ演奏熟達者の協力を得て、熟達者がどのような観点から良い音と悪い音の区別をしているのかを、ピアノを用いた被験者実験と音のスペクトル解析によって考察した。具体的には、グランドピアノの屋根を開き、単一の鍵盤(middle C)を一定の打鍵操作で弾いた際に生じる音を収録し、その周波数スペクトルの時間変化を解析した。同時に、複数の被験者にその音を聞いてもらい、良い音か悪い音かの判別をしてもらった。その結果、良い音と悪い音では、人間の可聴域におけるスペクトルの時間変化に、有意な差があることがわかった。特に、実際に弾いた音よりも周波数が3倍から4倍高い倍音のスペクトル変化が大きく異なっており、熟達者はこの違いを鋭く感知しているとの結論を得た。これらの実験結果をもとに、良い音と悪い音の差を生み出す打鍵操作の違いを力学的に解析するための理論手法の構築を部分的に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、視覚が制限された被験者の対人協応プロセスを主な対象とする予定であったが、考察を進めるうちに、聴覚による環境音の認知プロセスも個々人の無意識行動に重要であるとの認識を得た。このように視覚および聴覚という両方の視点から身体動作実験と行動解析を行うことで、想定よりも広い視野から研究を進めることが出来たことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ピアノ演奏時の身体動作におけるキネティックチェイン過程の度合いを熟達者と初心者の両者に対して調べ、さらに初心者に対してはその学習過程を追跡観察する。また、打鍵時の指にかかる力の時間変化を圧センサーにより調べ、上記理解の助けとする。これらと並行して、視覚視野を制限した少人数集団の運動課題実験を継続し、自然発生する協応パターンを対称性分岐理論の観点から考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
視覚のみならず聴覚が制限された被験者の集団協応を知る目的で新たに始めた実験においては、既に所属研究室で有している備品を有効に活用することができたため、物品費やその他の経費に余剰がでた。また研究代表者と研究分担者の間でのミーティングの大部分をオンラインで行ったため、旅費に余剰がでた。これらの余剰経費については、国際的に認知されているオープンアクセス誌への投稿料と英文校正費に加え、経年劣化した身体動作測定用のモーションキャプチャー関連機器ならびにピアノの打鍵操作解析機器の購入費として、次年度以降に有効に活用する予定である。
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